うふふ、といつもより艶やかな唇に魅惑的な笑みを浮かべた彼女の頬は、これまたいつもより濃い薄紅色に染まっていた。

肌の色が白いので、余計に際立って見える。

しなだれかかってくる身体の温度も微妙に高い。

おまけに彼女が身動ぎするたび広がる、甘い果実と度数の高いアルコールの香り。

「お前…酔ってるな」

「よってないですー」

「酔っ払いはみんなそう言うんだよ」

「よっぱらいじゃないもん!リヴァイへいちょのいじわるー」

「へいちょって何だおい」

妙に間延びした声を出して拗ねたように頬を膨らませたルリは、リヴァイを見てプイ、と視線を逸らした。

ぷくりと膨れたその頬をつついてやると、何が面白いのかきゃあきゃあ悲鳴を上げて喜ばれる。

どこからどう見ても完全なる酔っ払いだった。

「……最悪だ…」

額に手を当ててがっくりと項垂れる。

ルリ共々珍しく二日連続の休日が与えられたので、思う存分ベッドに引きずり込んで甘やかしてやろうと考えていたのに、流石に酔った相手に無体は働けない。

こうなると分かっていたら、

「同期の飲み会があるんです、ちょっとだけ顔を出してきてもいいですか?」

などと可愛らしくおねだりされたときに、何が何でも却下してやったものを。

そもそも酒に弱い癖して、なぜにここまで飲むのか。

眉間に皺を寄せたリヴァイの顔を見ていたルリの瞳が、突然うるうると潤んだ。

「へいちょう、おこってますか…?」

「別に怒ってねぇよ」

「うそだぁ、おこってるー!」

えぐえぐと泣き始めるルリに、彼女の涙には弱いと自他共に認めるリヴァイは途方に暮れた。

自分に非がないことは勿論分かっているのだが、当然酔っ払いに理屈は通用しない。

「あー…おい、ルリ、俺が悪かった」

すん、と鼻を鳴らすルリを抱き寄せて、あやすようにポンポン背中を叩く。

しばらくそうしていると、すりすりとリヴァイの肩に頬をすり寄せた彼女の唇から、健やかな寝息が零れ始めた。

深い溜め息を吐き出して、気持ち良さそうに眠るルリの身体を抱き上げる。

しっとりと汗ばんだ肌の滑らかさに思わず邪な感情が首を擡げるも、どうにか根性で捩じ伏せた。

ベッドに横たえると、起きているだけ無駄なので自分もその隣に寝転がる。

「チッ…人の気も知らずに呑気なもんだな」

口では文句を言いながら、それでも風邪を引かないようにと毛布をかけてやる辺りが、周りに甲斐甲斐しいと言われる所以だ。

まぁこれぐらいの駄賃は許されるだろうと、軽く唇を重ねる。

「起きたら覚えとけよ、ルリ」

小さく囁いて、やわらかな身体を腕の中に抱き込む。

心地好い温かさを確かめながら、緩やかな微睡みにそっと意識を預けた。


もてあます夜

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