わたしに触れる、この手が好きだ。

いつだって大切な宝物を扱うように優しく触れてくれる。

あんまり優しくて、時々くすぐったいような気持ちになるのだけれど。

「壊れたりしないのに」

髪を撫でてくれる大きな掌にそっと擦り寄ると、どうだかな、と鼻で笑われた。

ちょっとひどい。

「まぁ、別にお前が壊れるとは思ってねぇが」

鎖骨のラインを乾いた指先が滑る。

じんわりとした熱が唇に触れた。

「危なっかしくて目が離せねぇと思ってるのは確かだ」

「それはわたしを信用していないってこと?」

「緊急時とは言え、単騎で巨人に突っ込むような女をどう信用しろと?」

「…それに関しては返す言葉もございません」

思わず目を逸らすと、強引に顎を掴まれて視線が重なる。

どんな時でも真っ直ぐに前を向く、この瞳も好きだ。

「もし次同じことをしたら、手枷嵌めてその身体を鎖で繋いでやるからな」

「ごめんなさいもうしません」

「俺としてはお前を繋いでおける方が有り難いんだが」

背中に回った腕に、そっと抱き寄せられる。

額に押し当てられた唇が微かに震えた。

「…そうすりゃ、いちいち失った時のことを考えずに済む」

「リヴァイ…」

わたしの行動が彼に不安を与えたのだと、ようやく気が付いた。

普段絶対に弱味を見せたりしないリヴァイだからこそ、その言葉の意味がよく分かる。

「…心配させてごめんなさい…」

抱き締めてくれる胸に縋ると、呆れたような溜め息が一つ。

優しい掌が頬を撫でた。

「ルリ」

わたしを呼ぶ、この声が好きだ。

失えば、生きて行けないと思うほど。

「…頼むから、置いていくようなふざけた真似はしてくれるなよ」

「リヴァイこそ。勝手に死んだら許さないから」

馬鹿げたくだらない世界に、この人をくれてなどやるものか。


your all mine

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