重い沈黙に満ちた一室で、リヴァイ班のメンバーであるエレン、ペトラ、オルオの三人は深刻な表情を浮かべていた。

というより、もはや深刻を通り越して絶望感さえ漂っている。

「まずいですね」

「まずいわね」

「あぁ、まずいな」

「オルオはちょっと黙って舌でも噛んどいてくれないかしら」

「辛辣が過ぎるぜ、ペトラよ」

「あら、強制的にもがれたいならそう言えばいいのに」

「ちょっ、ペトラさん落ち着いて!話がずれてます!」

冷ややかに微笑みながら立ち上がったペトラをエレンが必死に宥める。

仲間割れなどしている場合ではない。

彼らが今ここでこうしているのには、深淵な理由があるのだ。

「やっぱり三日が限度でしたね…」

「そうね…むしろよく持ちこたえたというべきだわ」

「だがどうする?もうこれ以上は…」

俺達の手には負えない、とオルオが呟いた時。

何処か遠くから哀れを誘う断末魔が木霊してきた。

エレンとペトラは顔を見合わせ、青褪めたオルオがごくりと息を呑む。

「ハンジさんですね…」

「ハンジ分隊長ね…」

「ハンジ分隊長だな…」

様子見に出たエルドとグンタが戻らないことから考えて、すでに二人も揃って彼の人物の餌食となったのは間違いないだろう。

脅威はもう三人の間近まで迫っている。

「あぁぁぁ…!それもこれもエルヴィン団長がルリさんを連れて内地に行ったりするから…!」

恐怖のあまり大きな瞳いっぱいに涙を貯めたエレンはジタバタと悶えた。

そう、ことの始まりは調査兵団団長であるエルヴィンが、内地への公務に兵長補佐のルリを伴って行ったことに起因している。

「団長ったら、兵長がルリなしで正常な思考を保ったままで居られるとでも思ったのかしら…」

「…ペトラお前…容赦ねぇな…」

自身の補佐であるルリを公私問わず常に傍に置くリヴァイは、彼女がいないというだけで機嫌が通常時より三割は低下する。

物に当たるのならまだしも、目についた人間を捕まえては八つ当たりという名の理不尽な暴力を加えるのだ。

それでも大抵の場合、ルリを呼べば問題はすぐに解決した。

だがしかし今回は彼女がリヴァイの傍を離れてから既に四日が経過している。

もし今ここに超大型巨人が現れたとしてもその眼力だけで相手を削げるだろう、と誰もが思うほどに、リヴァイの機嫌は史上最悪だった。


next page


×