遠い北の地で彼が最期を迎えたという報が届いたのは、間もなく秋も終わろうかという頃だった。

とうに枯れた筈の涙は、届けられたその手紙を受け取った途端、また際限なく溢れ落ちていく。

『たとひ身は 蝦夷の島根に朽ちるとも 魂は東の君やまもらん』

流麗な字で、記されていた言葉はたったそれだけ。

宛名も何もないそれを手紙とさえ呼べるのかどうかは分からないけれど。

「…本当に、最後まであなたらしい…」

照れ屋で頑固で、だけどいつだってぶっきらぼうに欲しい言葉をくれた優しいあの人。

思わずふっと零れた笑みは、だけどすぐにまた涙に呑まれた。

瞼の奥で高い空にくゆる紫煙と彼が好んだ漆黒の色だけが鮮明な色を刻む。

ああ、そうだ。あのひとは、もう何処にもいないのだ。



追憶

(ねぇあと少し、ほんの少し、泣いてもいいでしょう?)





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