書類越しに視線を交わして微笑み合うなんてことはまだ序の口。

ハンジにしてみれば可愛らしいルリはともかく微笑むリヴァイなんて恐怖以外の何者でもないのだが。

また、リヴァイがルリに触れる回数がやたらと多い。

手渡された書類を受け取るときに彼女の手を優しく撫でたり、艶やかな髪に指を絡ませてみたり。

普通に会話すればいいところを、わざわざ傍に呼んでその耳元で囁いたり。

挙げ句の果てには、休憩時間になるとルリの柔らかな膝枕を我が物顔で堪能してみたり。

こうしてみるとリヴァイによる一方的な愛情表現に思えるのだが、ルリがそれを甘受するどころか頬を染めて実に幸せそうな笑顔を見せるので、事態は余計に悪いのだ。

ちなみにハンジがルリに同じような行動をとった時は、「ルリに触るな変態が」という有難いお言葉とともに、ちょっと洒落にならない蹴りを人類最強にお見舞いされた。

だが何より問題なのは、エレンが指摘した通り、公衆の面前であれだけ甘ったるい空気を盛大に振り撒いておきながら二人が未だ恋人同士ではない、という点にある。

「まぁねー、流石にアレはどうかっていうんで、過去何度も二人をくっ付けるべく壁外調査もかくやの作戦会議が行われたんだけどねー。結果は御覧の通りだよ」

「そんな…!」

がっくりと膝を着き、絶望した…!と言わんばかりの表情で項垂れたエレン。

「なんかもうここまでくると、アレも日常風景っていうか?」

「…に、日常風景…」

慣れって怖いよねーとケラケラ笑うハンジの横で、死んだ魚のような目をしたエレンは、パッタリと机に倒れ込んだ。


淡い桃色が瞬く世界で



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