「あの、アレはいつもあぁなんでしょうか…」

どんな実践訓練や巨人化実験にも決して音を上げることのなかったエレンが、げっそりとした表情で呟いた。

心なしか蒼褪め窶れているように見える。

ハンジにはその原因が分かっていた。

何せ彼らとはエレンよりも付き合いが長いのだ。

しかし、敢えて知らない振りをしてニヤニヤ笑いながら頬杖をつく。

「おやおや、どうしたのかなエレン」

「…あの二人ですよあの二人!兵長とルリさん!」

小声で怒鳴るという器用な技を披露したエレンは、部屋の向こうで黙々と書類整理をこなす二人の男女をビシッと指差した。

ぴったりと息の合った調子で山積みだった決裁書を次々と処理しているその様子は、優秀かつ有能な上司と部下といった風情である。

あくまで一見した限りでは、だが。

「何なんですかあの人たちアレでまだ付き合ってないとかほんと理解できないんですけど!?つーかぶっちゃけ目の毒!」

「エレン落ち着いて、キャラ変わっちゃってるよ」

「これで落ち着いていられるほど俺はまだ大人じゃないんですよ!」

やり場のない感情を発散させるかのように、うがあああ!と頭を掻き毟った発達途上の少年を宥めながら、ハンジはニヤニヤしたまま再度リヴァイとルリの二人に目を向ける。

確かにアレは目の毒だ。


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