自分より一回りも小さくてほっそりとした指先の感触を、なぞるように確かめる。 艶々と色付いた桜色の爪を丁寧に撫でれば、堪えかねたように笑みが零れた。 「おい、逃げるな」 「だってくすぐったいんですもの」 身を捩った彼女の肩をつかまえて背中越しに抱きしめると、いっそう楽しげな笑い声が耳をくすぐる。 まるで幸せの音みたいだと思いながら、どうしてだか泣きたくなった。 「…瑠璃」 「はい?」 「瑠璃、瑠璃、」 折れそうなくらい頼りない真っ白な首筋に額を押し付けて、加減が分からなくなるほど抱き締める。 瑠璃が驚いたように息を詰めたのは一瞬で、すぐに華奢な掌が応えるように背中へ伸びた。 「ねぇ政宗さま」 やわらかな木漏れ日にも似た声音が耳朶を揺らす。 それだけで、 「わたしは、あなたの傍に居られてとても幸せなのですけれど」 「瑠璃、」 「あなたも同じ心で居てくださるのでしょうか」 それだけで、確かに幸せなのだと思えたから。 「…Of course,honey」 幸せな世界幸福 |