「お前今から俺の枕になりやがれィ」

「…はい?」

久々のお休み。

まったりと紅茶を飲みながら大好きな推理小説を読み耽ろうとしていたその矢先、実に豪快に部屋の襖が開け放たれた。

無論ノックなんてものは無かった。

青空を背景に襖の前に立っていたのはかわいい顔した暴君、じゃなかった、真撰組一番隊隊長沖田総悟その人である。

「えぇと、沖田さん、あなた今市中見廻りのお時間では…?」

「めんどくせェから山崎に押し付けてきやした」

(…いつもながら不憫だなぁ山崎さん…)

何を言っても今更なので、心の中でひっそりと同情するのみに留めておく。

一方、机に置かれた分厚い小説を邪魔だとばかりに部屋の隅にブン投げた沖田さんは、満足げに笑ってわたしの膝にごろりと寝転がった。

これもまた今更なので、特に何も言わずに指どおりの良いサラサラとした髪を梳くように撫でてあげる。

まるで猫みたいに、気持ち良さそうに目を伏せる沖田さんが、このときばかりは年相応に可愛らしく見えるのが、実は結構、好きだったりして。

「何ニヤニヤしてんですかィ」

怪訝そうに見上げてくる沖田さんの唇に、そっと人差し指を押し当てる。

「内緒です」

わたしだけに与えられる幸せな特権は、誰にも秘密にしておきたいから。

「ほーう、俺に隠し事たァいい度胸してるじゃねーか」

その後問答無用で押し倒されるのも、やっぱり今更だったりするわけですが。



ひみつのくちつぐみ



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