「……さむい」

かじかんだ両手を情けなく見下ろしてぐすりと鼻を啜る。

吐き出す息の白さに辟易して空を睨むと、どんよりと曇った鉛色が一面を覆っていた。

そういえば午後から降雪の予報が出ていたなとぼんやり視線を戻したとき、

「せーんぱーい!」

「ぎゃあ!」

「ぎゃあってそんな色気のない…」

見事なタックルと一緒に腰のあたりへと腕が巻き付いて、振り返ればやわらかな黒髪が揺れていた。

「…遅いじゃないの赤也くん」

「うわ、先輩冷て!」

「誰のせいだ、誰の」

「あ、コンビニ寄って何かあったかいもんでも買いましょーよ」

いっそ清々しいまでに噛み合わない会話はいつものことなので気にしない。

とりあえず寒空の下三十分も待ち惚けさせられた恨みを込めて、赤く上気した頬を冷えた指先で思い切り摘まんでやった。

「い……!」

「ふふん、冷え性舐めんじゃないわよ」

「なんでそんな得意げなんスか」

呆れたような声が笑う。

「そだ、クリスマスプレゼント、手袋にしましょーか?」

「ううん、いらない」

「即答って…」

しゅんとうなだれた背中をちらりと一瞥し、その左手を取ってゆっくりと指を絡ませる。

「これがあるから、いらない」

きょとんと見開かれた瞳の前で繋いだ手をひらひら振ってみせれば、視界いっぱいに私の大好きな笑顔が広がった。



てのひらに溶けた冬

(あたたかなぬくもりを別ち合う)




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