「終わった・・・・!」
叫んだ、そりゃもう叫んだ。
叫んだというか気持ち良く言い放った。最後に受けた大学の正門目の前の道路のド真ん中で。
周りの受験生は「何だあいつ」なんて顔して見てるけどそんなの気にしない。結果はどうであれ、終わったのだ。受験という名の戦いが。
全国VS自分の戦いに終止符を打てたのだ。
声を出して喜ばずにいられるか。
「恥ずかしい。」
「じゃー楓は他人のふりしてかまわないよ。」
「・・・・来た意味ないだろ。」
ちょっとだけ楓はふてくされながら私の右手を取った。
そう、楓は試験が終了した私を迎えに来てくれたのだ。楓自身はバスケの推薦という超美味しいものでとっくに学校を決めてしまっている(まぁでもそれは楓の頑張りの結果)
何個か大学は受けたけれど、第一志望は今日受けた学校で、楓と同じ大学だ。手ごたえはまあまあだった。大嫌いな英語も毎日やったおかげで人並みにはとれたはず。
もしかしたら、受かるかもしれない。楓と同じ大学に入れるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて大学を後にする。
「どうだった?」
「何言ってるの楓。」
わからないものはわからないのよ。にっこり笑んで言えば、楓は妙に納得したらしい。
そう、わからないものはわからないのだ。そんなところは悩まず飛ばして次の問題に取り掛かるという時間短縮法を私を取った。悩んで出てくるなら悩むけれど、私の脳みそは効率が悪いので悩んだって出てこない。
テスト中のポジティブさ大事、最高!!
「でも楓もむちゃ言ってくれたよね。赤点常習犯の私に俺と同じ大学受けろなんて。」
「・・・・でもちゃんと一緒に勉強してやったろ。」
「大半は横にいて週間バスケを読んでただけですけどね!」
何が一緒に勉強よ、一緒にいただけでしょ!楓とつないでいる手を前後に振る。
まあ、横にいてくれただけで、頑張れたのは事実なんだけれど、と言おうと思ったけど、それは私の胸の内に秘めておくことにした。
そう思うと、ここ数ヶ月が頭を過ぎる。
バスケ部の推薦で入った楓はみんなが引退した後も部活を続けた。疲れ切っているはずなのに楓は部活が終わった後、毎日そのまま私の家に来てくれたのだ。
俺が頼んだことだから、と。邪魔にならないようにするから、と。
邪魔なわけない。一緒のところに行こうと言ってもらえただけですごく嬉しかったのに。
それから楓は毎晩うちに遅くまでいてくれた。すぐ睡魔に負ける楓が起きていてくれた。・・・・いや、たまに寝ちゃうことはあったけど。
たまに楓が頑張れるときは楓が問題を読んで、私が答えて、わからなかったところは一緒に調べて覚えた。
私が勉強で疲れて妙にストレスがたまって爆発しそうになるたびに、楓は外に連れ出してくれた。自分の自転車の後ろに私を乗せて、近くのコンビニにアイスを買いに行ったり、夜は気分転換に夜空に浮かぶ星を見せてくれた。
ここまで来られたのは、楓のおかげなのだ。
「毎日一緒に夕飯食べて、勉強して。楓がいてくれたから頑張れたんだよ。」
ありがとう、と繋いだ手にぎゅっと力を入れれば楓も笑んで握り替えしてくれる。
「ナマエ。」
「ん?」
楓は今までないくらいに優しい顔をして繋いでないもう一方の手で頭をなでてくれた。
お疲れさま
(よく頑張りました)
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私の理想の勉強。流川氏と一緒にこういう風に勉強したい。受験が終わった方、本当にお疲れ様でした。