「卒業できた。」

「奇跡だな。」

「は?!」



本気でやって3年間まじめに取り組んでますからねこっちは!!と叫ぶ代わりに、卒業証書を思いっきり握りつぶした。


さきほど学校を卒業した。

ずっと一緒だったクロロは年上だし、社会人(違った、盗賊だったわ)だけど、流星街出身だった私たちの壁はほとんどない。

壁もないし、なんなら一番近い存在だ。

だって、昔から離れたことがないんだから。



「にしてもなんで学校なんか通ったんだ。」

「クロロが稼いできてくれてお金には困らないからちょっと普通の人たちとのコミュニケーションを学ぼうと思って。」

「・・・それ意味あるのか。」

「あるでしょ!」


怪訝そうな顔つきをするクロロに思わず突っ込みを入れた。

そもそも人類皆敵!みたいなところで育ってるのに我々に社交性ってものがあるわけない。だからちゃんとその点を勉強しようと思ったのよ!とポケットに手を入れながら歩いているクロロに言えば、あまり興味なさそうに「へぇ、」と言った。



「これでみんなの代わりに他人とコミュニケーションとらなきゃいけない任務はナマエちゃんにお任せだね!!」

「へぇ。」

「興味を持って!」


あなたのために頑張ったつもりなんだから!と叫んでみたけどマジでどうでもよさそうだったからあきらめた。

クロロはそうだ、と私の話を適当にあしらって何かを思い出したように声を出す。



「今日旅団みんな集まるからパクに買い出しを頼まれた。」


団長の俺が何でこんなことしなきゃいけないんだ・・、と不満そうにポケットからメモ用紙を取り出して私に渡す。

折りたたまれたメモを開けるとお酒、お酒、お酒・・。うーん、木ダルで買っていった方がよさそうだ!誰が持つかは別として!とクロロの手を引いていちばん近いスーパーへ向かう。


店内に入ると、まずはメモに書いてある野菜をぼこぼこかごに入れる。パンもいれる。

メモをちらっと見れば次は雑に「肉」と書かれていた。



「お肉。」

「あそこにあるぞ。」


他愛のない会話をしながらお肉コーナーへ向かう。クロロとスーパーでお買いものなんてきっと明日は雨だな、なんて思いつつパクから渡された買い物リストを再び眺める私。

ちなみに買い物カゴはクロロが持ってます。


普通に一般の恋人みたいなことができてなんか嬉しい。



「どれくらい買えばいいんだ?」

「ウボォー達が食べる量を考えて買ってきてって書いてある。」

「・・だからそれはどれくらいなんだ・・・・。」


いつもと違ってオールバックじゃなく、髪を下ろしているクロロだから、悪態をついてもそんな怖くない。

髪下ろしてると笑って無くても表情が優しくなるんだよね。

そんなクロロが片手に買い物カゴを持って、口に指を当てて悩む姿とか新鮮すぎて自然と笑みが零れてくる。



「10kgくらいか?」

「えぇ、そんなに?!」


くす、っと笑っていると、クロロが真顔でとんでもないこと言い出したから我に返って聞き返した。

あ、いやでも奴らなら食べるかもしれない。

育ち盛りの時期は終わったはずなのに毎日あり得ない量のご飯を食べているんだから。



「ちなみにメニューは?」

「・・・わからん。」


品物に統一性がなさすぎる。

たぶん、焼くか煮るか蒸すかして酒のお供的なものを作るんじゃないでしょうか!と言ってみたら「ふぅん、」て返された。

興味ないんなら聞くんじゃねぇよ・・!とツッコみたくなったけどスーパーだからこらえる。

ビークール、ビークール。



「とりあえず肉の塊まるっと1つ買って帰ればいいだろう。」

「そうだね。」


私はクロロの返事を聞いてから直接肉をさばいてるおじさんのところに行って大きな塊を手に入れた。

かごに入らないからクロロへバトンタッチする。

そして次の瞬間、やつが目に入ってしまった。



「あ、クロロ、私アイス食べたい!」

「アイス?」

「そ。100ジェニーアイス!」


100ジェニーアイスとはその名の通り、100ジェニーつまりワンコインで買えるアイスのこと。

色んな種類があってしかも美味しいやつなのだ。チープな感じが久々に食べると何とも言えない。



「食ったこと無いな。」

「アイスもめったに食べないしね。」


食べるとしても高級プリンアイスだしね!とアイス専用の冷蔵庫に近づく。



「クロロ何味がいい?」

「プ・・、」

「プリンは無いよ!」

「・・・・。」


プリンという前にさえぎった私の方を残念そうに見るクロロにちょっと可愛いと思いながら私は冷蔵庫へと目を移す。



「んー、いちごとバニラどっちにしようかなぁ・・。」

「2つ買えば?」

「ダメ!1個を半分こしたいの!」

「はぁ?」


なんで、と不思議そうに私を見るクロロに私は熱く説明した。


確かに2人で1つずつ買えばいいと思うよ、2種類食べられるしね!でも今日は一般人みたいに2人で恋人らしく一般のスーパーで買い物だよ?じゃあ一般人の大好きなアイスを2人で仲良く食べたっていいじゃない。確かに一般人でもこんなに安い100ジェニーアイス1人1個買うけどね!でもいいじゃない、1つを半分こなんてなんか仲良しーって感じして!


一息で言えばクロロはすっごく面白そうに私を見ていた。一生懸命笑いを耐えていた。



「・・真面目に言ったのに。」

「っ悪い悪い。」


あんまりにも必死だからつい、とクロロは本当に本気で笑っていた。こんなクロロを見たのは久しぶりだと思う。

笑顔のクロロが見られるのはうれしいけど、複雑だ・・!

そんな私の心情を読んだのか、クロロはわかったわかった、と困ったように笑う。



「じゃあ1つイチゴを買って今帰りながら一緒に食べて、もう1つバニラを家に買って帰らないか?」


2つの味を食べられて、2回も一緒に食べられる。

一石二鳥だろ?とクロロは提案してくれた。

不思議だ、さっきよりもなんだかクロロが優しい気がする。



「・・・最高です。」

「よし、じゃあカゴに入れて。」


2つの味の異なったアイスをクロロの持つカゴに入れて、手をつなごうと思ったけど肉の塊に邪魔された。

ちぇ、ってなったのがわかったのか、クロロはしょうがないな、とかごを持ってる方の腕にお肉を抱えてくれた。すごい腕力。


「今つないでおかないと。帰りは酒の樽もって帰らないといけないからな。」


左手も右手もふさがる。とクロロはにっこり笑ってレジへ向かう。

珍しいさりげない優しさに思わずニンマリしてしまった。



「早く帰ろう。」

「えー、せっかくデートっぽいのに?」

「また今度してやる。今日は早く帰らなきゃいけないんだ。」

「みんなが待ってるからって―・・、」


しょうがないなぁ、とふてくされると、クロロはまたクスリと笑う。

だって、とクロロは何か言いそうになったけど、もうただ笑顔なだけで、何も言わなかった。



今日の主役は君だもの!
(卒業おめでとう!)
(うわあああみんなありがとううううう!!)

****
えのもとさんに捧げます。
遅くなっちゃってごめんなさい!
帰ったら卒業したナマエちゃんを祝うためにみんながサプライズパーティしてくれたよ!な最後でした!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -