完璧な奴なんていない。

俺だって、多少ある。ほしいと思ったものはほしい。制御ができない。



俺たちの団長だってそう。完璧に見えるけど、俺より完璧じゃない。

俺より人間として欠落しているし、興味がある者にしか動かない。頭はキレるけど、面倒だと思ったら動かない。人が基本嫌い。

何なら俺も、他の団員も同じだ。知らない奴には近づきたくないし関わりたくない。


人間どんな奴でも、欠落してる部分を必ず持っているはずだ。


だから俺も、彼女も、



完璧には程遠い。







「何しに来たの?」


今日は朝から曇り空だった。

いつも通り自分のデスクで、団長に頼まれた次に盗む物の資料を集めていると、背後で何かが動く気配がした。

念を持たないこの気配。何より怯えたような感じ。


こんな奴、ここには一人しかいない。




「俺が怖いなら近づかなきゃいいんじゃないの、ナマエ。」



振り返って冷たい声で、笑顔で、そう彼女に告げると、背後で俺に話しかけようとしていたナマエが怯えた表情を浮かべて俺から目を反らした。

自分を守るように胸の前で両の手をこねて、どうしたらいいかわからないように目を泳がせている。



「自分から来ておいてその態度は無いんじゃないの?」


イラッとしたので、ため息を深くつくと、ナマエはまたギュッと縮こまった。


なにそれ、と言ってやりたくなったのをぐっと抑える。


こんなにもイライラさせる奴は初めてだ。自分の気持ちをはっきり言わない。縮こまった生き方をしているこんな奴。

吐き捨ててやりたいけれど自分を抑えるために、とりあえずもう1度深く息を吐いた。



「で、何しに来たの。」


しょうがないから問い掛けるとナマエはようやく口を開いた。



「団長が呼んでる・・・。」

「・・・もっと早く言ってよね。」



怒られるの俺じゃん、とため息をつけばナマエはまた小さな声でごめんなさい、と顔を伏せた。



俺は椅子から立ち上がって一歩一歩ナマエに歩み寄る。

ナマエは俺を避けたいと言うように一歩後ろへ下がった。


そのたった一つの行動が、俺をまた苛立たせるのだ。



「・・・・いちいちさ、ムカつくんだよ。どうしてそうなの?」


低い声で、怒りを抑えながらナマエの視線に合わせるように屈んで目を無理矢理合わせる。


不安げなナマエの瞳が、俺の瞳に映った。



団長や、パクや、俺以外の団員には笑顔を振り撒いてるくせに。

どうして俺には怯えたような顔しかしないの?

どうしてそんな震えた声しか出さないの?

はっきり言ってみなよ、思ったこと。


そんなナマエ、



ふっ、と視線をずらして耳元に近づく。

その時も、ナマエの瞳は不安に揺れた。



「大嫌い。」



世界一、嫌い


そう耳元で呟いてやれば、彼女はまた怯えて、そして悲しそうな顔をした。




咲いたアザミ
(近づかないで)


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