「ねぇねぇ、ちょっと、ほんとにこの辺にターゲット来るの?」



ちゃっかり優雅に過ごしちゃってるんですけど、とロゼワイン片手に椅子の背に少しのけぞりながらクロロに問いかけた。


大陸性気候のカラッとした国で、私はクロロとのんびり過ごしてしまっている。
路面に面してるテラス席のバルに入り、エビのガーリック揚げに、生ハム、シシトウ揚げに岩塩をかけたもの、そして貝。
ワインはクロロがシャルドネ主体のスパークリングで、私はロゼのスパークリングだ。

ウボォー達と飲み屋に入ればとんでもなくでかいジョッキの生ビールぷっはー!と言いながら流し込むけれど、この気候はこれがいい。

そして2人なのにクロロの悪い癖が出て「ワインに合うの適当に見繕ってくれ」と言ってしまったばかりにかなりの品目が出てきてしまい、テーブルの上がカラフルだ。エビが陽気に踊って見える錯覚に陥る。



「私と少食なクロロじゃこれ食べきれないでしょ。頼むよもうメニューすら見るの面倒くさいからって全部他人に任せるのやめようよ今度から!」

「食べきると、この国だと店員に足りなかったのとか聞かれてうざいからいいだろ別に。」


つまみたいやつだけつまめ、とクロロは遠くを眺めながらワインをクッと一口飲んだ。


全然反省する気も、次に生かす気もないぜ!俺様だね相変わらず!と私もつけてたサングラスを前髪をかき上げるように頭の上にグッとあげて、さらにワインをのんだ。

そのまま周りを見渡して、カップルがベンチでいちゃついてたり、人々が通り過ぎたり、ご飯を食べていたり、車が通り過ぎたり、という先程から何ら変わりない景色を確認する。



「それにしたってもう1時間もここで過ごしちゃってるけど良いの?ターゲットほんとに来る?」

「時間にルーズなんだ。大丈夫、来る。ここはヤツの気に入ってる店でオークションの後はここの2階のVIPルームで食事をする。」



下調べ済みだから安心しろ、とクロロはダルそうに私を見た。

クロロと付き合いは長いけれど、この緩いスタンスは何年経っても変わらない。ゆるいのに、隙がない。それがこの男なのだ。

ていうか付き合いは長い、と言うと語弊がある。

なんで私こんなのといつも付き合ってるんだろうと思う。もっと優しい人がいて、こんなわがままな人じゃない人がいるに決まってるのに!なんでなんだろう!全然わからなくなってきたよ!と心の中で自問自答する。

うおおおお!ってなったけど、そんなのはいつものことなので一瞬で冷静になってふう、と一息ついて口を開いた。



「良いけどさー、美味しいお酒と食べ物食べてるだけだから何も文句はないんだけどね。いやマジこれただの旅行にしか思えなくてですね。全然仕事してない。」

「お前いつも色んな国ふらふらしてるんだから、いつだって旅行だろ。」

「失敬ね!良いものないかな、面白いことないかなって旅してるだけじゃない!」


私の仕事にケチつけないでくれる!自分だって私のこと頼って今回オファーしてきたくせに!とシシトウをつまんで口に放り投げた。

甘みと後からくるちょっとした苦味と塩気でワイン飲みたいよ!と脳が指示してくるので逆らわずに喉へ流す。

そしてクロロが腕を組みながら口を開いた。



「だって暇だろう。」

「暇じゃない!」


何言ってんだお前は、と首を傾げて目で訴えてくる。

腹立つわぁ、と心の中で思いながらも飲み込んだ。なんたって相手は腐っても彼氏、の前にクライアント。怒らない怒らない。ナマエは寛容なんだ、と自分に言い聞かせた。



「そういえばナマエ、今回の報酬変えても良いか。」

「・・・なんだって?」


落ち着け落ち着け、ビークール、と自分に魔法をかけていたらとんでもない発言でその努力をぶち壊された。

なんちゅうクライアントだよ。え、仕事中に最初に交渉した金額変える気ですかこの人!と開いた口が塞がらない。



「1ジェニーたりとも負けません。」

「俺の金でこんなに優雅に飲み食いしてるのに?」

「け、経費です!」


すぐ仕事に取りかかったっていいならすぐやるけど、ターゲットが来ないからクロロが飯食いながら待ってるとか言ったのになぜ私がそんな質問ぶん投げられてるのか。

キーってなっている私を無視してクロロはすぐそばを通りかかった定員の女性に声をかけ、ワインを追加で注文する。



「まあ俺貧乏じゃないから良いんだけどな。変えなくたって。」

「えぇ・・・。」

「ちょっとからかいたかっただけ。今回のオークションに欲しいものが予定変更で出なかった。」


だからなんかもう飯食って酒飲んでたらどうでもよくなってきたんだよな、と追加で頼んだワインを手に取り、口に含んで飲み込み、椅子の背に仰け反って空を見上げた。

そんなクロロを見て、思わず口をぽかん、と開けてしまう。開いた口が塞がらないというのはこういうことだ。



「出たよ、このナチュラルわがまま体質。私がいない間にパクが甘やかし過ぎなんだよ、だからこんなわがまま坊ちゃんに育っちゃうんだよ、クロロが!」

「誰がわがまま坊ちゃんだ。」

「私の目の前でダルそうにしてる黒髪男!」

「俺はやりたいことに忠実に生きてるだけだ。」


なにが悪い、とクロロは反らせてた体を元に戻し、今度は机に両腕を組んだまま置いて前のめりになった。



「そもそもナマエのことを旅がしたいからって言う理由で1人で自由にさせてやってる俺の寛大さを分かってるのか。」

「う・・・、」

「この俺がだぞ。」



そ、それを言われてしまうと・・、と私は何も言えなくなってしまった。


普段はメールとか他愛ない話だけしかしない。

それでもこの性格をもってしても文句を言わないクロロに、確かに驚いている。それと同時に、たぶん、それくらい思ってくれているんだろうなとも思っている。

だってクロロは、気に入らなかったり興味がなければすぐ飽きてしまう。

それなのに定期的にどんな理由をつけてでも会おうとしてくれるのは、きっと彼なりの不器用な愛情表現なのだ。



「愛されてると思います。」

「あぁ、別にそう思ってくれていい。目的もなくなったし、出かけるか。」

「・・・おっとぉ?!」


私がクロロの発言に思わず顔を赤くしてしまって変な声を出してしまう。

私の感情に気づいたクロロは、不敵な笑みで笑うのだ。



「俺は本当にほしい物や、好きなものには、ある程度融通が利く男さ。」


その代わり、他のは何も待たないし、容赦もしないし、意見も聞かないけどな。とクロロは立ち上がる。

私のそばに来て手を取り、私の右の手の甲に口づけをして私を立ち上がらせる。



このクロロという男は、何年経っても、理解できない。



つかず、離れず、
(今日は結局本当にターゲット待ってたの?)
(来たらラッキーくらいでどうでもよかった。)
(・・・あ、そう・・。)


****
なちゅらるわがままクロロ推奨な管理人です。
スペイン帰りにばーっと気持ちの赴くまま書いたのでいつもと文章が違うかも。
こういうのを書いていると、やっぱり私は大人な話を大人になってからも書くのは苦手で阿呆な話を書く方がまだ向いている気がします。笑


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