「トリック・オア・トリート!」

「ハイ◇」

「・・・・・・・。」



10月31日。

いたずらっ子には欠かせない日。そう、今日はハロウィーン!

魔女の帽子と、適当な黒いマントを被ってヒソカにあの呪文を言ったけど、面白味に欠けました。



「何で持ってるのー?!」

「だって絶対言ってくると思ってたもん◆」

「わかってるなら無駄にエアーリーディングしてお菓子持たないでよ・・・・。」


せっかく悪戯の準備してきたし、仮装もしてきたのに、と肩を落とした。


つまらないつまらないつまらない。せっかくヒソカに悪戯できるチャンスだったのに。普段やられていることを倍返しできるチャンスだったのに。

右手に乗せられたキャラメルを見つめて深くため息をついた。



「・・・よし。」

「?」


包みを開いて茶色のキャラメルを口へ放り投げる。

もぐもぐもぐもぐ、歯とかにくっ付くけど一生懸命噛み続ける。ある程度小さくなった頃を見計らって、ごっくんと飲み込んだ。




「よっし!無くなった!トリック・オア・トリート!」

「ハイ◆」

「・・・・・・・。」



再びニコニコ笑いながら出した右手にお菓子を乗せられた。

あ、今度はチョコレートだー。じゃなくて!酷い!ひどすぎる!一生懸命歯にくっつくキャラメルを頑張って間で飲み込んだのに!私の顎の疲れを一体どうしてくれるんだ!と心の中でヒソカを睨んだ。



「ヒソカ!?」

「だって自分から悪戯のチャンスをあげる奴なんて居ないよ?」

「ノブナガはノッてくれた。」

「・・・・アレは良いの◇むしろアレと一緒にしないで」


アイツはバカなの◆とヒソカはにっこりと笑んだ。


ヒソカにもらったチョコレートをまた口に入れてさっきあったことを思い出す。

確か最初はお菓子を渡されたけど、空気を読めと言ってもう1回「トリック・オア・トリート」って言ったら「持ってない」って言ってくれたんだっけ。

嬉しくなって思いっきり顔に小麦粉をぶちまけてやった私はなんて良い子なんだろうと思い出しニヤけをしてしまった。



「最低だね◆」

「ヒソカには言われたくないな。」


クスクス笑って返すとヒソカも綺麗に笑った。


さて、もうこの人に悪戯することはあきらめて私は違う人のところに行って悪戯しようと「じゃあね」と手を振りながらくるりと方向転換した。

次のターゲットはフィンだ。何してやろう、次はどんな悪戯をしてやろう。フィンはキレたら容赦ないからすぐに走って逃げ切れるくらい遠くに行ってから何か投げつけるタイプの悪戯がいいかな、なんて考えながら一歩一歩進む。



「ナマエ◇」

「ん?」


ヒソカに後ろから声をかけられた。何か用事があるのかと、またさっき向いていた方向にくるりと向き直る。


「なぁに?」

「トリック・オア・トリック◆」

「・・・・・は?」



一瞬耳を疑った。

え、何?私の耳壊れた?え?トリック・オア・トリック?




「選択肢・・・・!」

「ほら◇どっちが良いの?」

「だから選択肢1つしかないんですけど!?」


何言ってんの?!と叫べばヒソカはさっきと違った妖しい笑みを見せた。

そして一瞬で悟った。この笑顔はやべぇと心が叫び、脳が危険信号を光らせ、サイレントを鳴らす。じりじりと間を詰めて来るから私も必死に一定の速度で後ろへ下がる。


けれどもここは室内。行けるスペースに限界があるというもので。ついに背中に壁が当たってしまった。



「そう、トリックが良いの◆ナマエは物好きだなぁ」

「何も!何も言ってない!ち、近づかないで・・・・!」

「じゃ、いたずらしなきゃね◇」

「・・・っ!」


力の強さと体の大きさは一目瞭然。壁に追い詰められ、これ以上動けないように右腕をつかまれ、互いの鼻先がぶつかる寸前まで怪しくて艶やかで綺麗な顔を近づけられる。

当然腕をつかまれたら逃げられもせず、力で勝てるはずも無くて、開始の合図として噛み付くようなキスを落とされた。



悪戯か、いたずら・・か?
(ボク1年の間にあるイベントの中でこの日が特に好きだな◇)
(もうハロウィーンやらない!)

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