「う、ごほっ・・・・、うぅ、」
「吐けるだけ吐け。」
寒いのか生暖かいのかよくわからない夜。私は苦しくて吐いていた。吐きたくて吐いているわけじゃない。吐かなくて済むなら吐きたくない。ただ吐かないと気持ち悪い。
苦しんでいる私を見かねたクロロは、本を読む行為をやめて私のそばまで来てくれた。スーパーのビニール袋に顔を突っ込んで私が出来るだけ楽になるようにクロロは優しく背中をさすってくれる。
体は熱いし、怠いし、頭は痛いし、今にも死にそうだ。
この症状は・・・
「やっぱり風邪・・、」
「二日酔いだ。」
ですよねー!
そう明るく言い返したかったけれど、胃が爆発しそうなので心の中で返事をしておいた。
私は数時間前までお酒を飲んでいた。しかも飲み相手はウボォーとノブナガだ。仕事が終わった帰りに一緒に仕事をしたノブナガとウボォーが久々に飲もうぜ勝負だ!と言ってきたのでそれに乗ってしまった。
パク達と行く上品なバーなんかではなくて、高くて美味しいジャポン酒やビールを盗み、ホームで飲み明かす。これがあの2人とよくやるパターンだ。
それにしても数時間前の自分を殴ってやりたい。絶対的に体格もキャパも全然違うんだから勝てるわけないのに一緒にお酒を飲んだ自分は馬鹿なんじゃないかと思う。
「何で吐くまで飲んだ?お前酒弱いだろう。」
「ノブナガとウボォーが私が飲み干す度に注いでくれるから、残しちゃ悪いと思って・・・。」
「・・・・・。」
お人よし、呆れた目をして言われた。目だけじゃない。顔全体で呆れているのがよく分かる。
私が戻した袋の口を縛って、近くのごみ箱へを捨てながらクロロは私に口をゆすぐための水をくれた。
ありがとう、と受け取ってゆすいでまたビニールに吐く。数回繰り返したところでようやく口がすっきりしたので今度は私がこの袋を縛ってごみ箱へと捨てた。
「美味しかった、悔いはない。」
「馬鹿だな。」
「いーですそれでー!」
久々のノブナガとウボォーとの時間楽しかったもん、なかなか会えないしさ!と脱力しながら首を垂れさせれば、クロロは私を引き寄せて自分の方に私の頭を乗せさせてくれた。
「・・・・クロロも本読まないで優しくしてくれるし。」
「・・・まぁさすがに盛大に吐いてるやつの横で本を読むほど薄情じゃないしな。」
「読んでたら絶望よね!」
ふふ、とまだ残るアルコールに酔いながら笑えばクロロは私の頭を優しく撫でてくれる。
これが私の特権だ。普段は冷酷非道な幻影旅団団長様は、私の前だけ普通の人で、だれよりも優しい人に変化する。
それが何よりも大好きで、愛しくて、優越感に浸れてしまう。だからクロロから離れられないのだ。
「今度はクロロも一緒に飲もうね。」
「俺はお前らみたいにバカな飲み方はしない。」
「楽しいよー、きっと。」
良い事尽くしです、気持ち悪いけど。
そういうとクロロは困ったように笑った。こんな困った顔をして笑うクロロが好きだ。
好きだからこのままの勢いでキスをしたいけれど、さすがに吐いた後の口でキスは迫れない。その辺の理性はまだ残っているのだからいい酔い方してるよね私、と心の中で自分をほめてしまった。
まだ酔ってるんだな、とクロロは私の火照った頬を触る。クロロの冷たい手の温度を心地よく感じながら「うん、」と返す。
「酔い、醒ましてやろうか?」
「うん、寝なきゃね。もう体力的にも限界だし・・・。」
「そうじゃなくて。」
悪い事を考えています、的なこと満載な笑みが近づいた。もうちょっとで鼻先がかすれそうなくらいだ。
酔っているけど、そこまでクロロの綺麗な顔を近づけられると脳内に電気がビビビと走る。だから少し頭が覚醒するのだ。
「えーっと・・・クロロさん?」
「だから酔いを醒ましてやる、って言ってるんだ。」
「だから寝る・・・、・・・もしや・・・・!」
「そのまさか。」
気づいた時にはもう両手を掴まれ、押し倒されていて。
「く、くろろ、わたし吐いたばっかだし・・!体力ないし!」
「大丈夫だ、さっき口をゆすいだし、お前酔ってるから味覚がマヒしてるのか知らないがあの中にオーラルケア剤入ってた。きれいさっぱりだな。そしてお前の体はそんなにやわじゃない。知ってる。」
「わぁ!なんかオーラルケア剤とか全然色気ないね!でもやっぱりさ!っー!」
思いっきり叫んだら頭にガーンと金が乱暴に打ちつけられたような感覚が走った。
どうやら私の中に残っているアルコールはまだ私の体を私の思いのままに動かそうとしてくれないらしい。
そんな私のことを理解してか、クロロの手が服の下をすり抜けて入ってくる。
「ひゃ、つっめた・・!クロロの手冷たい・・・!」
「お前は熱いな。ほら、酔い醒ますぞ。」
「やめ・・・!」
愛しい熱に溶ける (アルコールの用法容量は守りましょう)
**** いつもと違う雰囲気のクロロ書きたかった。ちょっぴり変態チック。
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