「っくしゅ!」



寒い寒い冬の季節から暖かな春へと移行しようとしている。

私は寒い季節より暖かい春が好きなのでうれしい。昼寝とか最高だよね、ポカポカだし、風も気持ちいいし。春になるとどうしても裏のお仕事をしたくなくなってしまうのが事実で2ヶ月ほど休暇を取った。

でも1人で寂しく家にいるのもつまらないので昔なじみのフェイタンの家へ(無理矢理)来ている。本人に許可なんてとってない。

最初、私がさも当たり前のように部屋の中でくつろいでいたときはひどく不機嫌そうに眉間にしわを寄せながら殺す気満々で襲ってきたけど、何とかかわして逃げてかわして土下座しての繰り返しをしたら静まってくれた。

それ以来居すわらせてもらっている代わりにちゃんとフェイにご飯を作ってあげてるし、掃除もしてあげてる。なんて良い家政婦なの私は、と思わず自我自賛してしまうほどだ。


そんな日々が数日続いたある日の今日、あのフェイタンがくしゃみをした。



「意外に可愛いくしゃみだね、フェイ。風邪・・・・?はっくしゅん!」


読んでいた本から不機嫌そうに視線を離すフェイの方を見ながら私が声をかけると私もくしゃみをしてしまった。

欠伸ってよくうつるって言うけれど、くしゃみってうつるっけ?なんて思いながら鼻をさするとフェイはいつものように眉間にしわを寄せて私の方を睨んだ。



「可愛いとか黙るね。しかもワタシ風邪ひかない。お前の方が風邪ね。」

「おっかしいなあー。熱はないから風邪ではないとおもっ・・・・、っくしゅん!」

「ほら、やぱり。」


お前風邪ね、とフェイは嬉しそうににやりと目を細めた。人が具合悪いのが嬉しいなんてなんて奴だ。最低だ。

それにしても季節の変わり目は風邪をひきやすいと言うけれど、馬鹿、つまり私は風邪をひかないはずだ。

それなのにこんなにもくしゃみが止まらないなんて、本当に風邪をひいてしまったんだろうか。なんか目もゴロゴロする。

風邪薬でも飲んでおこうかなぁ、でも私に風邪薬効くかなぁなんて思いながら立ち上がろうとしたその時、私の目に信じられないものが映った。



「・・・あれ?」

「なんね。」

「フェイ、目が潤んでるよ。」

「ばっ!見間違いよ!」


ふざけるな!と声を荒げながら目をゴシゴシと擦るフェイ。

あーあー!そんな事したら目に傷がついてしまうよ!ダメだよ擦っちゃ!と彼の腕を掴もうとするけど赤くなった目で「触るな」と私をギッと睨みつけてくる。

赤くなった目のせいで怖さ倍増。近づけない、殺されてしまうと本能で悟った私はフェイの腕へと伸ばした自分の手を引っ込めた。



「や、でも確かに潤んでて・・・、」

「違うね!」


殺すぞ!と暴言を絶やさない。

本当この人酷いよ心配してあげているのに!これだから盗賊は!と言いたくなったがあまりにもフェイが全力で潤んだ目を擦っているので叫ぶよりもどうにかその行為を止めようと命がけで腕を掴もうとした時、私の脳内をある可能性がよぎった。



「あのさ、フェイ。もしかして目、痒い?」

「っか・・・・ゆくないね!」

「(痒いんだ・・・・。)」


どうやら彼は潤んだ目から涙を拭う為に目を擦っていたのではなく、痒くて擦っていたらしい。そして私も心なしか目がかゆい。

私はソファーの背もたれに1度背を預けて、一考してからまた再び横に座っているフェイをゆっくりと見た。



「花粉症ですね。」



風邪じゃなくって。

そう言った瞬間、目を擦り続けていたフェイの動きが止まった。


両手を目から離してマントの中に隠す。

数秒の沈黙の後、フェイは今にも何人か殺りだしそうな低い声を絞り出した。



「花粉症の原因て何ね。」

「え?原因て?」



いきなりの質問に逆に聞き返した。

声がやばい、低すぎる、怒ってる。なぜか知らんが怒ってる。

嘘だ、怒った理由は分かってる。だがしかし理解したくない。

そりゃあ天下の幻影旅団の一員がアレルギー反応を起こしてるなんてかっこ悪・・、いや屈辱的なんだろう。

フェイは声色を変えずにまた口を開く。



「風邪なら寝る前に髪乾かさなかたとか、寒い部屋にずと居たとか、そゆう原因で風邪ひくね。なら花粉症の原因は何ね。」

「(何その可愛い原因・・)そういうことか。うーん、たぶんスギとかヒノキの大量の花粉が舞い散るせ・・・・い・・・。」




彼は傘を手に取った
(ぶた切てくれる!)
(おおお落ち着けフェイーー!)

****
旅団が花粉症とか有り得なそう。キャラ崩壊ごめんよフェイ。

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