いつ帰ってこられるかわからない、彼はそう言っていた。


それでも私は待つと言った。だって私は彼が好きで好きでどうしようもないから。



「(まぁそれ以前に「待ってないと殺しちゃうかも◆」とか言われたんだけどね・・・・。)」



それも笑顔で。・・・・大事な所だからもう1回言うけど笑顔で。

あの時片手にトランプ構えてたっけ。こりゃあもう待ってるしか私に生きる術はない。本能がそう言っていた・・気がする。


でもそれももうずいぶん前の事だから忘れた。



というか忘れても何の支障もない。

だって、ソファーに座っていた私の横に、いつのまにかヒソカが隣に居るんだもん。



「・・・・色々聞きたいんだけど、とりあえず鍵どうやって開けた?」

「手品◇」

「私の部屋自体にも厳重ロックかけてるんだけど、それは?」

「愛の力◆」



殴るよ、と言おうとしたら上機嫌なヒソカにぎゅーっと抱きしめられる。


あぁ、この感じ。この安心感はいつぶりなんだろう。

脳の奥底からトロン、と溶けてしまいそうなヒソカ独特のあたたかさが凄く好き。



怒ろうと思っていたのに私も抱きつきながらヒソカの服を握ってしまった。



「ちゃんと待っててくれたんだね、イイコ◇」

「だって待ってないと殺しちゃうんでしょ?」


本当は待ちたくて待っていたのに、いきなり帰ってきたヒソカに素直になれなくてつい意地を張って可愛くない事を言ってしまう私の口。

待って待って待ち続けて、やっと会えたんだからもっと可愛い事を言って、どろどろに甘やかしてもらいたいのに。


自己嫌悪していると、ヒソカはまるで私の心を読んだかのように妖しく口元を挙げて頭を撫で始めた。



「ナマエもボクがいないと寂しくて寂しくてたまらないクセに◆」


私の耳に口を近づけて、ゾクゾクする声で囁かれる。

久々のその感覚にふにゃんと体の力が抜けてしまった。


それからずっとヒソカが私の耳元で遊ぶもんだから、何も考えられなくなってきてしまう。



「・・わかってるなら・・・・もうどこにも行かないでね。」


耳を舐めたり、耳元で囁いたりするヒソカの策略が効いたのか、それとも私が自己的に素直になれたのか。

幸せに頭がふわふわしていたからわからないけど、2番目に言いたい事をようやく言えた。


顔を上げれば嬉しそうに笑って落としてくるヒソカのキス。

それに答えて、もう絶対どこかへ行かないように、1番言いたかった事を言いながら離れてしまわないようにぎゅっと抱きついた。



待ってたよ

(おかえり、ヒソカ。)
(ただいま、ナマエ◇)


※mon cheri:フランス語で最愛の人

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