声が声が声が声が声が声が


聞こえない

思い出せない



「落ち着け、」

「落ち着いてなんかいられない!ナマエの声が思い出せないんだ!」



まだ旅団を結成しても居ない頃。愛しい人を急病で亡くなってしまった。

力が無くて、守ってあげられなくて、傍にいることしか出来なくて。



忘れないで


彼女は最期、ただ一言言って笑った。




「忘れないで、って言われたのに・・・・。」

「忘れたわけじゃない。ただ焦ってるだけだ。」

「でも出てこないんだ!」



ヒステリック気味に叫べばクロロは哀れなものを見る目で俺を見た。


彼女独特の優しい声が、俺の名前を呼んだ声が思い出せない。

仕事で疲れた時も、寝る前も彼女との思い出を頭の中に巡らせていたのに。


それがいきなりだ。



過去の映像は頭にめぐる。けれど、声が聞こえなくなってしまった。頭の中は無音の映画がめぐるだけ。

心の中にあるはずの彼女の声が流れるはずのステレオが、壊れてしまった。



「ナマエがしゃべるんだ。でも口を動かすだけで何も聞こえない!思い出だから言ってた事は覚えてる。けど、そう言ってた声が・・・・・っ声が・・・・!」



旅団団員ともあろうものが、どれだけ情けない声を出しているんだろう。

頭を抱えてしゃがむ。団長が近づいてきて俺の体を揺さぶっても、声を張り上げてもそんな声は聞こえない。


周りの声を遮断して、一心不乱に彼女の声を探す。




「ナマエ、ナマエ、ナマエ、ナマエ・・・・・!」




心が、崩壊した。

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