「あっっっつい!クロロー!暑いよー!溶けるー!」

「うるさいぞ。」



夏真っ盛り。クーラーが壊れた。


今は旅団の仕事も無いので、クロロは私が住む家に戻ってきてくれている。

仕事中は「危ないから」と言って私から離れていってしまうので仕事が無い間は傍にいられてすごく嬉しい。

帰ってきてくれたばかりだからベタベタしたい!そう思っていた矢先に冷房という名の私の天使が壊れてしまった。

冷房が壊れたら死ぬほど暑い。イコール、クロロとベタベタくっ付いたら共倒れする。という緊急事態に陥ってしまったのだ。



「どうすればいいの!」

「落ち着けナマエ。」

「もう暑くて思考回路も変になりそうだよ!これ扇風機回ってんの?!」

「回ってるだろ。」


ほら、とクロロは額から汗を流してるくせにとっても涼しげな顔で扇風機を指差した。

・・・・確かに回ってる。しかも強で。

室温が高いから扇風機の力を持ってしても熱い空気が私たちに降り注ぐだけなのか。だから風を感じても暑いと思ってしまうのか。

太陽はもう少しお休みを貰おうとかそういう事を考えてくれはしないんだろうか、と一生懸命頭の中でいろんなことを考えたけど、結局暑いものは暑いという結果にしかならなかった。



「なんか色々考えて騒いだら喉渇いた。」


立ち上がって冷蔵庫へ向かおうとすると、「俺の分も」とクロロはすかさず私に注文した。

さては私が立ち上がるのを待ってたな?なんて思いながらも「どうせついでだし」なんて思って冷蔵庫を開けてアイスコーヒーを出す。

コップ2つとアイスコーヒーのボトルを持ってリビングに戻れば、そこにはウチワという武器を獲得したクロロの姿があった。



「あ、クロロだけウチワなんてずるい!」

「早いもん勝ちだろ?」

「それは旅団皆でご飯食べる時のルールでしょ?」


ここは私のお家です、つまりは私が法律です、さぁ風を私に全力で生み出してくれればいいよ!と両手を広げたらクロロは私を無視した。

も、もうちょっとノッてくれても・・いいんじゃないかな、なんて・・思う。




「そんなに暑いならちょっと待ってろ。」


クロロは立ち上がるとキッチンへ行った。結局立ち上がるんだ、なんて思いながら見ているとクロロは冷凍庫を開ける。出してきたのはコンビニでもらえるような小さなビニール袋。

袋の中に手を入れれば出てきたのは2人で分けるタイプのアイスだった。



「これ、食べてみたかったから来るとき買ってきておいた。」

「・・・・パプコ・・。」



不釣合いのアイスを出してきた事に一瞬固まってしまった私をよそに、クロロはくっ付いている2つのアイスを分けて1つを私に差し出した。

ありがとう、と言いながらアイスを貰って蓋を開け、口へ含むと冷たくて甘いアイスの味が口いっぱいに広がった。



「あ、うまいなこれ。」

「よかったね。」


カシカシ、と容器を噛みながらクロロはうちわを使って右手で自分に風を送る。

私もアイスを食べながら出来るだけクロロの近くに寄った。だって、扇風機クロロ占領してるし、私もぬるい風でいいから欲しいし。何よりやっぱり、暑くてもクロロにくっ付きたい。

長い仕事から帰ってきてくれただけでも嬉しいけど、やっぱりそれ以上にくっつきたいんだ。それなのに、それなのにクーラー何故昨日壊れた!何で空気を呼んでくれないんだ!

暑いのとクロロにくっ付きたいのとのジレンマでもやもやしていたら、クロロが私の異常な行動に気づいたようで自分に送っていた風を私に少し向けてくれた。



「まだ暑いか?」

「暑い・・けど、」

「けど?」


くっ付きたい、です。と小さく零せばクロロは私を見た。

口にパプコの容器を含んで髪を下ろしていて、胡坐をかいて半袖を肩までたくし上げて、いつもの威厳が全く無いクロロはどこにでもいる柔らかな表情をした少年みたいに見える。

中身が無くなった容器をクロロはゴミ箱へ軽くシュートして私の頭を撫でた。

私のまだ少し中身が入ったアイスもクロロに取られて机の上に置かれてしまう。

クロロは私の膝下と背中に手を入れて「よっ」と自分の膝の上に私を置いた。そのいきなりの行為に私の心臓はドキドキうるさく鼓動してしまって、顔も熱い。



「お前体温高いなぁ。」


これじゃあ暑いに決まってる、と私にウチワで風を送ってくれた。

この体勢は、嬉しい。確かに「くっつきたい、べたべたしたい」っていう私の願望にそってくれている。

けどたぶん暑いのはそんなに好きじゃないクロロが自分からお姫様抱っこみたいな事をしてくれてることにビックリした。

ドキドキバクバクしている心臓を抑える様に右手で自分の胸を抑えると、クロロは私の気も知らないで近くにあったアイスコーヒーを口に含んだ。



「風呂入るか。」

「・・・・お風呂?」


突然何かを思い出したようにポツリとクロロは零した。首を傾げると、クロロは私の頭を撫でてウンと頷く。



「ぬるいやつ。そしたら不快な汗も流れるし、体温も下げられて涼しくなるだろ?」


そしたら一緒に電気屋行こう、新しいクーラー買ってやるから、とクロロは私をお姫様抱っこしたまま立ち上がって脱衣所へ向かう。

あれ、あれ、おかしいな。おかしいぞ。クーラーを買ってもらえることに関しては今諸手をあげて喜びたいけど、この流れって、もしかして・・



「い、一緒にお風呂?」

「だって、くっつきたいんだろ?」


汗を流して涼しくなれる上に、一緒に風呂に入ってくっ付ける。一石二鳥だろ?とクロロは本当に少年みたいな表情で意地悪そうに笑った。




夏色ロマンス

(は、恥ずかしい!)
(今さらだろ。)

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