スケッチブックに絵を描いている手を止めた。

その代わりブリーチで色を抜いて、明るいベージュを入れた長めの髪の先を指でつまんで眺めてみる。

クロロも似合うと褒めてくれたし、あのサロンでカットとダブルカラーして正解だったなー、なんて思いながら隣で本を読むクロロに目を移した。

クロロはいつものようにぶ厚くて難しそうな本を読んでいるようだ。



「クロロ。」

「ん?」


真剣に本と睨めっこをしていても、必ず返事をしてくれるクロロのちょっとした優しさが好きだ。

それをマチやパクに言ったら「それはナマエだから。」と笑っていたけど、クロロは基本的に皆に平等に優しいのを私は知っている。

でも他の皆がクロロが本を読んでいる時に声をかけても全く返事をしないらしいから「私だけ特別なのかも」なんて思って嬉しくなってしまった。



「本面白い?」

「あぁ。ナマエも読むか?」

「どんな本?」

「史学。」

「ごめん、パス。」


史学は確実に読んだら寝ちゃうよとクロロに言うと苦笑しながらまた本に目を戻した。


でも本に熱中されてしまうと私を構ってくれるクロロがいなくなってしまう。

暇だし、寂しい。



どうしても構って欲しい。そんな欲求がこみ上げてきてしまった。



「クロロ。」

「ん?」

「暇だよ。」


毎回同じように軽く聞き返すクロロに近寄って、本を持っている右手に私の腕を絡み付けた。

本なんかより、私に構って、私を見て、と心の中で訴えかけてみる。



「んー。」

「暇なんですよ。」


色気を武器に出来たら最高だけど、私は色気の「い」の字も無いので言葉でどうにか甘えてみる。



「くーろーろー。」

「はいはい。」

「クロロさんー。」


適当な返事しか返してくれないクロロの腕に絡みつく攻撃から抱きつく攻撃に変えてみた。

皆には返事をしないのに私には適当とはいえ返事をしてくれる。それだけでもありがたくて嬉しくて特別なことなのに。

ほしいという欲求はとどまる事を知らない。

1段階よくなったらまたさらに1段階、ほしくなる。


うー、と抱きついた腕に顔を埋めているとクロロはクスクス上品な声を漏らした。



「ナマエ。」

「何?」


観念したように笑いながら、本をパタンと閉じてクロロは私の方に目を向けた。期待と希望に胸が膨らむ。



「この前服買ったろ?」

「うん。クロロが選んでくれたやつでしょ?ワンピース。」

「そうだ。それに着替えて来い。」


クロロは自分の腕に巻きついた私の腕を優しく外す。

そんなクロロのいきなりの発言を理解できなくて私は首を傾げた。



「どうして?」

「暇なんだろ?少し車を走らせたところに落ち着いた雰囲気のカフェが新しく出来た。」


そこに連れてってやる、俺は本をそこで読むがいくらかお前も気分上がるだろ、とクロロは私の頭を撫でて立ち上がる。

そしてポケットから車のキーを取り出して、長い人さし指で鍵に付いているわっかをクルクルと器用に回した。



「車の前でお待ちしてます、姫。」


いつの間にかクロロの手が私の手に添えられていて、手の甲に軽く触れる程度のキスを私に落とす。


そんなクロロの余裕な仕草に私が弱い事を知ってるくせに。



「・・すぐに支度してきます。」



真っ赤になった顔を両手で押さえながら笑っているクロロに背を向けて、パタパタと足音を鳴らしながら自分の部屋へと戻った。



愛しい、ほしい
(いつもあなたの仕草に心を奪われる)

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一応、大人っぽい話を・・目指したん、です←

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