コンコンという音から、ゴンゴンという音に変わり、最終的には、



ガッシャーン・・・・!




「え、っ何?!」



夜中に飛び起きました。




「よ。」

「よ、って・・・・。」



音のした方を見ればそこにはウボォーがいた。片手に沢山ビールが入った袋をぶら下げて、ガラスが散った床の上に平然と立っている。

毎回毎回夜に来るから、夜中に来た事は怒らないけど・・・・



「し、信じらんない・・、どんな入り方してくれんの。」

「・・・・こんな入り方。」


ウボォーはイタズラが成功した子どものように嬉しそうな笑顔を浮かべる。

この男は昔からそうなのだ。自由奔放で自分の欲に忠実に生きる。そんな彼が好きだからこうやってずっと一緒にいるのは間違いないけれど、人んちの、というか私の家の窓ガラスを破壊するのはいただけない。



「ちゃんと窓ガラス弁償してよね!」

「よくねぇ?窓無くても。俺が入りやすいし。」

「雨の日どうするのよ。」


まったく、と呆れてため息をつけばウボォーは豪快に笑った。



「ていうか何でそんなにビール持ってるの?」

「あぁ、体ん中にマダラ・・・・。・・なんかマダラっぽいヒルとその卵を入れられちまってよ。」

「ヒル・・・・!」



それを聞いた瞬間に大して運動神経がよくない私が後ろに大きく飛び下がった。今までの最高記録なはずだ。



「なんだよ。せっかく会いに来たのに。」

「や!近づかないで!触れないで!」

「つれねぇなぁー。」

「私虫大っ嫌いなの・・・・!」


知ってるでしょ・・!と、どんどん後ろへ下がる私を面白そうに見ながらウボォーもじわじわと寄ってくる。



「大丈夫だって。ビール飲み続けりゃ小便と一緒に卵排出されるってシャルが・・・・。」

「あああ来て早々下品な事言わないで!」



両手で両耳を塞いでもっと下がろうとしたけど、背中が何かにぶつかる。

そっと後ろを振り返ればもうそこには分厚い壁。



「万事休すだな、ナマエ。」


壁に追い込まれて逃げられないようにウボォーの両手が私の顔の両脇の壁に突かれる。



「良いじゃねぇか、触れるくらい。」

「・・・や、」

「嫌だとか言ったら、このヒルが充満してる体で犯すぞ。」

「どうぞ好きなだけお触りください。」



世にも恐ろしすぎる一言で私が折れた。

満足げに笑うと私の頬に触れるだけのキスをする。どんどんそれは移動して、私の唇と重なった。

いつもみたいに深いキスじゃなくて、優しいフレンチキス。


キスして満足したのか、大きな手を私の頭にポンポン、と乗せて言うのだ。



「今から一人殺ってくる。そしたら窓直そうな。」



待ってろよ、と彼は窓際に立つ。

あんまりにも楽しそうに笑うもんだから怒る気も失せて、むしろおかしくなった。



「早く帰ってきてね。」

「あ、行ってきますのキスするか?今度は息もできなくなるくらいの。」

「いやだよ、体の中にヒルいっぱい居るんでしょ?」


そういうとちょっと残念そうにもう一度私の頭を撫でた。

私から離れて、ウボォーは割れた窓に歩んでいく。



「ウボォー、」

「あ?」



振り向いた瞬間に必死にジャンプしてウボォーの頬に軽くキスを送った。

一瞬目が点になったウボォーはその後満足そうに笑って、屈んで私の頬にキスを返す。そんなお互いの行動になんだか恥ずかしくなってしまった。



「いってらっしゃい。」

「あぁ、行って来る!」




ウボォーは私にウィンクを決めて窓から飛び降りた。


私は彼がいつものように笑って帰ってくるまで、眠って待つとしよう。




眠りは永久のものとなる

(・・・帰ってくる、って約束したのに、)

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