SD:5月 球技大会

「スマーッシュ!」

「甘いっ!」


サッカーとバドミントンで分かれる球技大会。

球技大会なのになんでバドミントンなんだろう。うちの学校ちょっとおかしいんじゃないのと思いつつ、私はバドミントンをするために体育館にやってきました。



「あ、なまえ。」

「リョータ、今のナイススマッシュ。」

「だろ?」


へへ、と肩にラケットを乗せながら得意げに笑うリョータ。私もそこらへんに放置されていたラケットを持ってリョータ達に近づいた。



「俺は?」


そんなリョータの後ろからニュッとミッチーが登場。

ああ、さっきのリョータのスマッシュを返したのはミッチーだったっけ、なんて思うと同時に聞いてくるみっちゃんは可愛いなぁ、なんて思って思わず笑顔になってしまった。



「うん。ミッチーも凄い。」


脇に持っていたラケットを挟んで、パチパチと軽く手を叩くとミッチーは満足げに頷いた。



「てかなまえ。お前サッカーやるんじゃなかったっけ?」

「・・あぁ、なんかもうサッカーじゃなくなっちゃって・・・・。」


リョータの質問に遠くを見ながらそう返した。

リョータの言うとおり、今日私はサッカーをやるつもりでさっきまでグラウンドに出ていた。でも色々と問題が発生してしまったのだ。

本来球技大会はクラス対抗で行うもの。でもいろんな意味での問題児を集めたこのSクラスだけは孤立してしまっていて、Sクラス内の生徒だけで球技大会を行っている。

だから人数が少なくて、サッカーはチーム戦ではなく、最初にゴールを決めた奴が勝ちという突拍子も無いルールに変わってしまったのだ。



「Sクラスの生徒、しかも負けず嫌いの奴らがマジになった中でサッカーをやれる自信がありませんでした。」

「なるほどな。」


ミッチーは私の頭を撫でながら、おかしそうに眉を下げて笑う。

そんなミッチーの行動に、少し胸が高鳴ったのは気のせいだろう。



「こっちは普通のルールで普通にバドミントンやってるよね?」

「あぁ、大丈夫。ちょっと力が強いだけ。お前もやるならちゃんと威力下げるし。」

「じゃあ私も混ぜて。」


ちゃんと球技大会が出来そうな雰囲気にウキウキしながらラケットを握った。



「いいぜ。じゃあ3人で軽く打ち合いな。」

「うん!」

「ほれ。」


ミッチーの提案に頷くと、ハネを持っていたリョータがふわりと私に打ってくる。

私の立ち位置より少し前に落ちそうになったハネを追いかけてミッチーに返す。

それをミッチーが軽く拾ってまたリョータの方に返した。



「楽しい!」

「ただ打ってるだけだぜ?」

「いやだって私今日初めて球技大会っぽいことしたよ!」

「ああ、サッカーマジでやってなかったんだ。」


ミッチーもリョータも喋りながら私に合わせて打ってくれるから凄くやりやすい。運動神経が良い人って、人に合わせることができるから少しだけ羨ましく思う。

ミッチーが私にハネを送りながら口を開いた。



「お前今年からSクラスだったよな。慣れたか?」

「うーうん。まだ慣れたとは言えないかも。なんか個性的な人多いし。」

「この前清田とかと一緒に飯食ってたじゃん。」

「ノブとかは平気。でもまだ南君とかに慣れない。」

「あいつ結構良い奴だぜ。」


言い方がちょっとだけキツイところがあるから怖く感じるんじゃない?とリョータがそう付け加えると、あぁなるほどね、と自分の中で納得する。



Sクラスに入った当初はどうしても馴染みたくなかった。

馴染んでしまったらもう普通の生徒じゃなくなってしまうと思ってたくらいにSクラスの良い評判は聞いていなかったから。


リョータやミッチーだってそうだ。

リョータとミッチーは喧嘩っ早くて、最近まで入院をしていたと聞いていた。ミッチーに至ってはバスケ部を潰しに行ったと聞いていた。


絶対話しかけるまいと思っていたし、関わる気も無かったのに。

それなのにこうしてリョータやミッチー達と他愛の無い会話をしながらバドミントンをしていると落ち着く自分が、噂なんてどうでもよくなってくる自分が居る。



最初あんなに嫌だったSクラス。

もしかしたら、Sクラスに入れてラッキーだったのかもしれない。少しずつそう思えるようになってきました。




崩れ始めた壁

(ガッシャーン!)

(やべっ!窓ガラス割っちまった・・・・!)
(宮城!お前あれハネだろ!なんで窓割れんだよ!)
(羽子板みたいに下の部分が若干硬かったんス・・・)
(あーあ、職員室行き決定だな、俺ら)
(やっぱ前言撤回・・。最悪だ、Sクラス・・・・。)

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