SD:4月 新しい扉

暖かい春の日差しに包まれたこの良き日。


このたび、私みょうじなまえは、大量の補習と追試を乗り越え、無事3年生に進学するための切符を手に入れたというのに、特別クラスのSクラスに入ることになりました。



「ま、そんな落ち込むなよ!」

「藤真・・・、」

「そうそう、もう腹くくっときなって。」

「楽しそうに言わないでくれる?仙道。」



黙っていれば失礼な男前な奴が2人。前の席の藤真と右隣の席の仙道。むすーっとした顔で睨んでも2人の笑顔は止まらない。

こいつらは1年の時からSクラスである。

Sクラスと言うのはいわゆる特別クラス。
意味は簡単、そのままスペシャルのSだ。たら、その「スペシャル」は普通の「スペシャル」ではない。スペシャル、が頭につく「やばい奴」「頭がいい奴」「かっこいい奴」「運動ができるやつ」で色んなやつらが集まる特殊クラスだ。

このクラスの制度がいつからできたかはわからないけれど、とりあえず普通の一般生徒に良くも悪くも影響を与えてしまうのを避けるために設けられたクラスらしい。

しかも学年関係なく詰め込まれるこのクラスには2つ下の清田信長とか桜木花道とか、1つ下の宮城リョータとか、この通り仙道彰とかがいる。

もうやりたい放題だ。



「なんで私がSクラス・・・。」

「いーじゃん別に。他のクラスとそう変わんねーよ。」

「むしろ楽しくない?」


にこにこにこにこ、爽やかなはずの仙道の笑顔がうざったいとしか思えない。

このクラスは手に負えない問題児や普通のクラスに置いておくと何かとやっかいな生徒が集められるクラスなのに。



「なまえに何か問題があったんだよ。」

「去年悪いことしてないもん!」

「どーせ頭悪すぎが原因だろ、絶対!」

「ちょっと藤真、アンタ殴られたいの?」


このやろう、と視線を送れば藤真は歯を見せて笑った。

余裕なこの笑みがまたカッコよく見えてしまうから困る。そしてむかつく。私も去年の夏ごろまで騙されていた。けど、夏の終わりに補習で学校に来て1人真夏の教室で勉強に苦しんでいた時に藤間に初めて会って会話して以来、何かと仲は良い。いつかその話をするとして、話をもとに戻すけれどこの学校の女子は皆騙されているよ!藤真も仙道もどうしようもなく失礼だよ!誰だよ紳士って噂流した奴!撤回しろ!



「そーいや藤真達は何でSクラス?」


きーっ!となっていたら、ふと浮かんだ疑問。

ミッチーなら更生したとはいえ、過去のことを考えればこのクラスにいるのもわかる。


でも藤真達がいる意味がわからない。

ん?と頭にクェスチョンマークを浮かべて問うと、仙道と藤真は「あぁ、」と視線をお互い合わせてから私を見た。



「それはね。」


仙道が人差し指をたてる。



「俺達が普通クラスにいると女子が授業に集中しないんだって。」


だから俺たちが悪いんじゃないんだよー、と仙道は特有のへらへら顔で笑った。今一瞬苛立ちが起こったのは私だけだろうか。しかも今季最大のイラッと感。


むくれる私に仙道は私の頭をわしゃわしゃと撫でた。

おいこら私仮にも先輩だぞ、と鳥の巣にされた髪を直しながら仙道を軽く睨む。



「私は、普通のクラスで、普通の生活がしたかったんだもん。」


こんな男子ばかりのクラスじゃなくて、女子が男子と同じくらいいるクラス。

なんでこんな個性が強すぎるクラスに私が・・、と愚痴をこぼしたら仙道も藤真も困ったように笑ってから私の頭をまた軽く撫でた。



「じゃあ普通の生活を皆で作ればいいじゃん?」

「・・君たちに作れる?」

「・・・・努力するよ。ね、藤真さん。」

「・・・おー。」


ちょっと自信なさ気に頭を掻く藤真と、それを見て笑う仙道。

そして周りで新学期早々騒いでいる猿達。いつものことなのだろうか、それを完全に無視して読書したり、携帯をいじる赤木や神くん。その他のみんなも好き勝手自分のやりたいことをやっている。


こんな風景を見ていれば私の中の苛立ちも薄くなってきた。


これはこれで良いかもしれない、なんて。どんなに騒いでもSクラスの決定は覆されないのなら、馬鹿は馬鹿なりに前向きにそう思うことにしようと、私は腹を括って新しい生活に挑む事にした。


皆と「普通」の生活を送るために。



ようこそ、Sクラスへ

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