SD:2月 バレンタイン争奪戦

「なまえちゃーん。」

「ん?」



窓の外から声がする。

寒いのを我慢して窓を開けば、そこには仙道とノブと土屋、それに花形がいた。

なんてカオスなメンツ。花形は3人のお守と見て間違いない。

とりあえず視線からして中に入りたがっているので、1つため息をついてから窓を閉めて階段を下りて玄関を開けてやる。


自分の部屋に通せば、床の上に座り込んだ瞬間に仙道がニコニコ上機嫌で口を開いた。



「で、なまえちゃん。」

「なに?」

「何ってもう、嫌だなぁ。俺となまえちゃんの仲なんだから、照れなくて良いんだよ。」

「・・・は?」


いやこいつ本当に何なんだ、どうした。

上に上がってくるときに持ってきたあったかい紅茶を飲みながら首をかしげた。



「・・・・え、わかんないの?」

「完璧わかってへんやろな。」


子犬のようにシュン、と寂しげな目をする仙道と、横で苦笑いするツッチー。ノブなんかもう目がうるうるしてる。


え、ちょっと待ってよ、私なんかした?したんだな?



「・・・・花形。」

「・・・・カレンダーを、」


見てやってくれないか


花形はメガネを上に押し上げながら申し訳無さそうにため息をついた。

花形の言うとおりに壁にかかっているカレンダーを見ればそこには小さな文字で印刷されている「バレンタインデー」の文字。



バレン、タイン・・デー・・・・



「・・・・お菓子メーカーの策略に乗るのはよくないと思う。」

「そんな殺生な!」

「ほんまやで!」

「俺、なまえさんだけにチョコもらえれば今年はそれで十分だと思ってたんスううう!」


悲痛な叫びを上げる3人に花形はまたため息をついた。ノブなんか本当に泣きそう。そんなに私からのチョコレートが欲しかったんだろうか。

仙道とツッチーはともかく、私ノブにはめっぽう弱いんだよね。


んー、と頭の中で色々考えた後に私は口を開いた。



「じゃあ今日はムリだけど、明日学校に持っていってあげる。バレンタインのチョコレート。」


ね?と笑めば花形を抜く3人の頭に犬耳が見えた気がした。



「本当?!本当ッスか!?」

「さすがなまえちゃん!」

「嬉しいわー。」


たったそれだけのことで純粋に喜んでくれる3人に笑ってしまう。

それは花形も同じようだったみたいで花形も静かに笑っていた。



「それで?花形はどうしているの?もう受験終わったの?」

「・・・・俺は明日も試験がある。」



話を聞けば気分転換に外を歩いていたら、私の家に向かっていたこの阿呆3人に捕まってここまで連れてこられてしまったらしい。



「あの・・その・・・・、お疲れ様です。」

「あぁ・・・。」


可哀想すぎて何も言えなかった。

まぁポジティブに考えるならいい気分転換になってるだろうから良いかな、・・・・たぶん。

私応援してる、頑張ってね、と付け加えれば花形は困ったように眉を下げながら「あぁ」と笑った。花形には明日あげられないけどクッキーもつけて渡してあげようと決めた。

すると横からノブがわんちゃんみたいに目をキラキラさせて私にくっつく。



「ホワイトデーは期待してくださいね!」

「え、ノブはホワイトデーくれるの?」

「当たり前じゃないっすか!」

「ノブ良い子ー!」

「へへっ!」


なんだこの可愛い生き物、好きすぎる。

仙道なんか霞んで見える。ノブの頭には完璧に犬耳が見える。尻尾も見える。

とりあえず嫌がる素振りはないので頭をぐしゃぐしゃ撫でてやった。



今回は頑張ってガトーショコラを作ろうと決意した。




バレンタインデーでの約束


<でもそれは、>



<時が進むということ>

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