SD:1月 元日
「進路決まりますように!」
「3学期は呼び出しありませんように!」
「授業中寝ても怒られませんように!」
「お前らなんかもうちょっと違う願い事にしろよ・・・・。」
なまえ、岸本、桜木の願い事に、保護者というような形でついてきていた池上がため息をついた。
今日は新しい年が明けた最初の日だ。時間が合う人と初詣をしようと決めたなまえは適当に連絡を取り、ちょうど初詣をしようとしていた3人を捕まえてやってきたのだ。
「なんでやねん。こっちはマジやぞ。」
「そうだぞ!」
「もう神頼みしか方法は無いんだよ!」
「黙ってくれ、新年早々俺は泣きそうだ。」
池上はこめかみを押さえた。
うんうん唸りながら必死に願いを続けようとする3人を引きずって、人の邪魔にならない場所へと移動する。
池上は周りの人の為に自分が来たことは正解だと自負した。
「ていうかバスケが上手くなりますようにーとかじゃないんだねー。」
「バスケは自力で上手くなるからいい。」
「自分天才ですから。」
「黙っとけ阿呆。」
なまえの質問に池上は当たり前の事というように答える。
そして横から出張った花道には岸本のチョップが頭に落ちた。そして頬をお互いに引っ張り合うというようなケンカが始まる。
それを見て池上はまたため息をついた。
口から吐く息は真っ白で寒さを物語る。
ふと何かを思った池上は、首に巻いていた黒いマフラーをなまえの首に巻いてやった。どうやらなまえの顔が寒さのせいで赤くなっていたので、寒そうに見えたらしい。
なまえは一瞬ビックリしたように目を開閉させた後、「ありがとう」とにっこり笑った。
「俺は今年も色々と前途多難な1年な気がする。」
「そんなことないよ、亮ちゃん。」
なまえは遠い方を見ている池上の肩をポンポン、と叩いてあげた。
ちなみに亮ちゃんというのはなまえ専用の池上の愛称である。
頬を引っ張り合っていた桜木と岸本は聞き捨てなら無い!と引っ張り合いをやめて池上の方を見た。
「そうやで。こんなんで前途多難なんて甘すぎるっちゅーねん。」
「それにお前らは3年だから無いだろうがな、俺様は冬休みの宿題という名の悪魔を退治しなければいけないんだぞ。こっちこそゼン・・・ゼン何とかなんだからな!」
「前途多難だよ花道!んでもって頑張ってね花道!書初めある?」
「いや、無かったッス!」
なまえは嬉々として喜ぶ桜木の手を握って「よかったねぇ!」とピョンピョン跳ねる。
どうやらなまえは書初めにいい思い出が無いらしい。
まぁ墨が零れるとか、筆が割れるとか、紙に字が納まらないとか、大方予想は付くのだけれど。それを容易に想像できた池上は1人くすりと笑った。
「んじゃ、おみくじ引きにいこっか!」
「えぇ、引くん?」
「何、岸本嫌なの?」
「嫌っちゅーか・・・、」
男らしい太い首に自分の手を回しながら岸本は首を捻る。
「俺、去年引いたら大凶やってん。」
大凶やで?と強める岸本になまえは苦笑するしか出来なかった。
あの膨大なおみくじの中から、滅多に当たらないと言われる大凶を引き当てるこの男は色んな意味で強運が・・凶運があるのかもしれない。
「去年大凶ならきっと今年は大吉だよ!」
「どんな根拠やねん。」
どうにか励まそうとするなまえにクスリと笑って岸本は少しだけ乱暴に、それでも優しくなまえの頭を撫でた。
おみくじなんて運試し。
結果が悪くても、きっと今年は素敵な1年だと信じれば、きっと大丈夫。
だって元旦からこんなにも楽しく過ごせたのだから、となまえは笑った。
あけましておめでとうございます (やった!俺大吉ッス!) (俺は吉。) (私も吉ー、残念。岸本は?) (・・・・凶や・・・・・。) (・・きょっ、去年より良いじゃん!)
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