HH:1月 元日

「ギャップ萌え・・・!」

「新年早々何言うんだお前は。」

「だって先生髪下ろしてるんだもん!」



新年明けましておめでとうございます。

今年も元気いっぱい、なまえです。


今日は元旦ということで、初詣に行く事になりました。


冬休みなのに今回はクロロ先生付きです。

何故かと理由を聞いたら、私たちが何をしでかすかわからないから見張るのだそうです。信用無いよね、でもついて来て正解だと思う。さっきフェイとノブナガ喧嘩しようとしてたもん。先生いてよかったって思ったよ。


あ、そうそう。冒頭でお伝えしたように今日のクロロ先生はいつもオールバックにしている髪を下ろしていてとても青年っぽいです。

ギャップの奇跡です。いつもの威厳というか怖さというか、そういうのがありません。


横でシャルが「人混みウザい」とか言っているけど、クロロ先生がまぶしすぎてそんなの聞こえません。




「聞こえてるくせにスルーするのは人間としていかがなものかと思うよ。」

「シャル、新年だよ?一発目からそういうこと言うのやめよう?」

「俺の今年の目標は自分に素直に生きるだから。」

「へぇ、あぁ・・ふぅん。」



今年『も』でしょう、と返せるほど私は強くない。

とりあえずなんと返して良いかわからなくなったので近くにいたパクの方へ逃げました。




「パクと一緒にいられるの久々だよねっ!」

「そうね、私は最近受験勉強ばかりだったから。」

「うん、でもパクなら推薦でいけたんじゃないの?」

「自分の実力を試したかったし、自分に合う所に行きたかったから。」



これでいいのよ、とパクは優しく笑んだ。


こんな純な笑顔を、しかも女の子の笑顔を見れたのはどれくらいぶりだろう。本当に嬉しい、泣きそうになる。

いつもはムサいのばっかりだから本当に癒される。


するとパクは「そういえば、」と私を見た。



「なまえ、あなた私の事よりも自分の進路は大丈夫なの?」

「あ、っと・・・・えと・・・、」


全然考えてないです、と苦笑いしたらパクも苦笑いで返した。


そうですよね、この時点で何も考えてないって言うのは結構やばいですよね、わかってます。


でもね、一生懸命考えたんだ。未来のこと、将来のこと。

私には何が合うのかとか、私を誰か求めてくれるんだろうかとか、いろいろ考えたけどやっぱり見つけることができなくて。


やりたいことも決められない。ただただ時間だけが過ぎていく。

あと2ヶ月とちょっとで卒業なんてまだ信じられないくらいなんだよ。




「・・い、おい、なまえ!」

「え、なに?!」


思っていたよりも自分は大分考え込んでしまっていたらしい。

突然ノブナガの声に意識を戻されて思わず声を大きくしてしまった。



「どうしたんだよ、ぼーっとして。」

「人が多いんだ、流されて迷子になるぞ?」


ノブナガの横からひょこっと出てきたフィンに二の腕を掴まれた。

フニフニだな、なんて失礼な事を言ってくれたから上着のせいだとアッパーを食らわしてやった。

それを見ていたウボォーたちは指を指して笑う。



「ククッ。それにしても珍しい、悩み事か?」

「悩み事する時は、時と場所を考えるべきね。」


ノブナガが笑って出てきた涙をふきながらの質問にフェイが便乗する。私の横にいたパクが心配そうに私を見た。


私が勝手に考え込んでしまったのに、パクに心配かけてしまったみたいだ。



「なんでもない、けど。」

「けど?」



シャルが私の顔を覗き込んだ。

あのシャルさえも少し心配そうな表情をしてくれたのを見てしまったせいなのか、私の中で何かがはじけた。




「皆は、進路どうするの?」


私の質問に人混みでうるさかったはずの周りが、いや、今もうるさいはずなのに私たちの空間だけ静かになったような感覚に陥った。



「私は、何も決めてない。」



そのまま何も考えず思ったことだけを口に出し続けた。




夢が無い

やりたい事がない

進路決定なんて、もっともっと先の事だと思ってた



どうしてみんなそんなにすぐ未来を決められるの。どうしてその未来を信じることができるの。

もしその選択を間違えて戻れなくなったらとか、そういう不安はないの?


今がなくなってしまうのが、怖くないの?



私は怖いよ。最初みんなと過ごすのが嫌だったのに、それが当たり前になって居心地がよくなって、この当たり前の毎日がなくなってしまうのが、すごく、怖い、さみしい、悲しい。

不変ってやつが手に入るなら私はずっとこのままでいたい、大人になんかなりたく、ないのに。


自分で口に出せば出すほど、今までなんとも思っていなかった「未来」が重く感じて、あっという間に不安になる。




するとおでこに強い衝撃が走った。




「っつーーー!・・え、何・・・?!」


何が起きたの?!と、伏せてしまっていた顔を上げるとノブナガが少し怒ったような顔をしていた。

あれ、私何か怒らせるようなことを言ってしまっただろうか。

楽しい1日のはずなのにテンションを下げるようなことを言ってしまった事に怒っているんだろうか。


さっきとは違う不安に駆られた瞬間、ノブナガとフィンが口を開いた。



「馬鹿やろう、何言ってんだお前。」

「今からそれがどうにかなるようにお参りしに行くんだろうが!」

「・・・・は?」


まだ痛い額に手を当てて、目をパチパチと開いたり閉じたりした。

そんな私を見てノブナガ、フェイ、フィン、ウボォー、パク、シャルは心配そうな、怒っていたような表情からにっこりと優しい笑顔へと変えて、それぞれ私を安心させるような声で言う。



「俺たちだって最終的な進路決まってねぇよ。」

「でもそんなのはまだ皆同じね。」

「確かに未来のことを決める時間はもう少ないかもしんねー。」

「けどまだあるにはあるんだぜ?」

「これで決めた進路が、あなたの人生の最終決定じゃないのよ。」

「もし決めたことが間違ってしまっていても、また違う未来を選ぶチャンスはあるんだから。」



まぁ俺は間違いなんて起こすことは無いけどね、絶対。

シャルはいつものニヒルな笑みに戻っていた。


それに釣られて私も思わずへらっと笑ってしまう。

パクはそんな私を見てにっこり笑いながらあったかい手で私の手を包んでくれた。パクのあたたかい手に包まれると、心もあったまってなんだか泣きそうになる。



「したいことがあっても、何らかの形でそれを逃してしまう奴だって沢山いる。」


ふと後ろを見れば今まで黙っていたクロロ先生が普段見せないような笑みでこっちを見ていた。



「ギリギリまで考えればいい。決まらなかったら、時間の許す限りいろんなことに手を出して可能性を広げてみればいい。お前は決まってないというけど、急がず沢山考えて、1つだけの道じゃなく、いくつも道を探せばいい。そうすればそれだけお前の可能性は広がるんだから。」



まぁ見つかんなかったらそん時はそん時だ。



そう言ったクロロ先生は本当に先生でいいんだろうかと一瞬頭を過ぎった。

けど適当なこと言われてるはずなのに、クロロ先生が言うとどうも説得力がある。


悩むことって大切だけど、悩んでいた自分が何だか馬鹿らしく思えた。



今年もきっと、素敵な1年だ。




どうか素敵で新しい1年を

(ほら、進路神頼みしにいくぞ!)
(お賽銭どうしよう?いくら入れる?)
(馬鹿ねお前、知らないか?)
(気は心って言うじゃねぇか)
(10円で十分だ、十分)
(お前ら絶対神馬鹿にしてるだろ)
(馬鹿にしてないよ、自分しか信じてないだけ)


****
最期のはフィン、なまえちゃん、フェイ、ウボォー、ノブナガ、クロロ先生、シャルの順。パクは周りで苦笑してました。

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