SD:12月 クリスマス・イヴ
「ジングルベール、ジングルベール、すっずがーなるーうっ♪」
ということで!
楽しいクリスマスを始めましょう。
「ケーキも無しに?」
「学校で?」
「裁縫しながら?」
「萎える。」
「シャラーップ。」
諸星、越野、南、藤真が盛大にため息をついた。
ため息をつきたいのはこっちだ。
「藤真、クリスマスイブなのに萎えるとか言わないで。テンション下がる。」
「本当の事言ったまでだろ。」
「まぁ普通だったら今日は彼女とデートする日だもんねぇー。」
藤真の返答に大ちゃんがハーフパンツを縫いながらうんうん、と頷いた。
そう、今日はクリスマス・イブ。
それなのに私たちは学校に缶詰状態だった。
何故かと言えば答えはただ1つ。2学期中に提出予定だった家庭科のハーフパンツ製作が終わらなかったからである。
なんでクリスマスイブに家庭科室にこもって裁縫なんかしなきゃいけないんだ。好きな人に対して一生懸命マフラー作ってるんじゃないんだよ、2学期中に終わらせないといけなかった家庭科課題のハーフパンツの作成をしてるんだよ。自業自得と言われればそれまでなんだけども!さみしい!さみしすぎる!
という勢いで、サボろうと思えばいくらでもサボれたが、ちゃんと提出すれば努力は認めてくれるということ(=成績もそれなり)なので頑張る事にした。
「みんな彼女いないくせに。」
「お前も男おらへんやろ。」
「うるさい南くん。」
ミシンでカタカタ作業を進めている南くんの背中を軽く小突いてやった。
あぁお母さん、なまえは最初苦手だった南君に小突けるまでに成長しました。
・・なんて思ってる場合じゃない。
せっかくの高校最後のクリスマスイブが裁縫で終わるなんて悲しすぎる。
少しでも楽しく過ごさねば!と私は普段使わない頭をフル回転させた。
そしてある話題に思い当たる。
「じゃあさ、せめて想像しよ。」
「は?」
越野はハーフパンツに縫い付けるポケットの部分の布を切りながら怪訝そうに私の方を見た。
は?なんて言わないの、眉間にしわ寄せないの、とお姉さんみたいに注意する。
「これテレビでやってたんだけどね。例えば私が君たちの彼女だとします。今日は初めてのクリスマス。私をどこに連れてってくれますか?もしくはどのように過ごしますか?」
「へぇ、面白そうじゃん。」
藤真はにやりと笑う。そして大ちゃんの方へ視線を送って声をかけた。
「諸星、お前ならどーする?」
「俺?あー、そうだな。ネズミの国でも行く?」
「うわ、ベタだな。」
「質問しときながらベタとか言うな。それにこーいうのは定番な方が良いんだよ。」
「そんなもん?」
藤真は私の方を見て意見を求めた。
どうやら私に女の子の意見を求めてきてるようなので、うーんと悩んでみる。
「素直に嬉しいと思うよ。ネズミの国はクリスマスイルミネーションとかパレードとかめちゃくちゃ綺麗だし・・・・。藤真は?」
「俺?俺は・・・・そうだな。彼女にサンタの格好させたりしたい。」
「うわ・・・。」
真顔で言うもんだから思わず声が軽蔑に等しい声が出てしまった。
そんな私の反応に藤真はむっと私に抗議する。
「なんだよ、男のロマンだろ。それに例えばの話だろ?別に本当には着せたりしねぇよ。」
頬を膨らます藤真が一瞬可愛く見えてしまった。くすりと笑って藤真を見る。
「あ、なんだ、ジョークなのか。」
「え、ジョークなの?俺超賛成だったんだけど。」
オプションはミニスカ希望ね、なんていう大ちゃんはこの際だから放置しておこう。
越野が想像したのか何なのかわからないけど顔真っ赤にしてるし。
「それで越野は?」
「お、俺?・・・んー、」
口をパクパクさせていた越野に話題を振る。
なんとなーくわかっていたけど、やはり越野はこの手には疎いようで布を切る手を止めて考え始めてしまった。
「別に・・彼女の行きたいとことかでいーんじゃねぇの?」
「へぇ、じゃあ買い物したいって言ったら付き合ってくれるの?」
「混んでなければ。」
「クリスマスに混んでないとこなんてねぇぞ、たぶん。」
藤真が横からツッコミを入れると越野は「ですよね。」と苦笑いした。
「じゃあ逆になまえはクリスマスどうしてほしい?」
「え、私?」
大ちゃんに質問を返されて腕を組んで考えてみる。
質問し返されるなんて思ってなかったから何も考えていなかった。そうだなぁ、クリスマスデート。一体何が1番嬉しく思えるんだろう。
春子ちゃんたちにクリスマスの予定とか理想のクリスマスとか聞いておけばよかったなんて後悔させながら無い頭をフル回転させた。
「んー・・・・、外でご飯食べたり歩いたりするよりも、どっちかの家に行って一緒にご飯作ってゆっくり過ごせればいいな、って思うかも。」
外に出て色んな所を見て回るよりも、一緒にスーパー行って買い物して、家に行って一緒に過ごせれば。
なんて柄にも無くロマンチックな事を考えてしまった。
「でも結構ポイント抑えてると思うのよ!」
「でもってなんだ、でもって。」
「独り言!」
「まぁなまえのくせに結構良い線いってるな。」
大ちゃんのツッコミと藤真の失礼な発言を軽くスルーする。
「そうだ、南くんは?」
何かクリスマスの良い提案ある?と問いかけた。
ミシンばかり見ていた南くんはこっちを見ると1回ミシンのスイッチを切って腕を組む。
うーん、と小さく声を零し、薄く眉間にしわを寄せた後、口を開いた。
「別に、一緒に過ごせれば何でもええんちゃう?」
一瞬だけ静まり返った後、南くんの周りに皆が寄ってたかって大騒ぎでした。
作業が一向に進まない
(うわ、めちゃくちゃ正論じゃないッスか・・・!) (お前は聖人か・・・!) (信じらんねぇ!) (素敵だよ南くん!) (うっさいわ!)
**** うちの南くんはツンデレ天然純情ボーイ、藤真は変態、諸星はオープンスケベ、越野はヘタレです(…)
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