特効薬

お昼の12時を回った。

それなのに私はまだ家にいる。むしろ布団の中にいる。



「っ・・・・割れる・・・・・。」




そう、頭痛が止まらない。

熱も微熱だというのに頭痛だけが激しくて寝返りを打つだけで頭が割れそうになる。

激しい痛みが走った頭に手をやった。


誰だ、馬鹿は風邪ひかないって言った奴。微熱とはいえ、私馬鹿なのに思いっきり風邪ひいてるんですけど。


朝起き上がった時のあの痛みは忘れられない。
両親も「・・・・あんたが風邪?!」と驚いていた。お父さんに至っては食べていた目玉焼きを落とした。なにそれどういう意味。


ちなみにその失礼な両親は仕事にいってしまった。

お母さんが「休もうか」と聞いてくれたけど、1人で平気だと答えて仕事に行ってもらった。

今思えばそう言ったことに凄く後悔している。

私ももう高3だし、全然イケると思ったのに風邪の時の1人の寂しさがこんなにも辛いものだとは知らなかった(だって風邪ひいたことないし)


・・・・なんて泣き言は言ってられない。確かお母さんがおかゆを作っておいてくれたはず。

キッチンに行って温めて少しでも食べて薬を飲まないとお母さんに殺される。


頭があまり揺れないようにゆっくりと上半身を起こした。




「あ、オハヨ◇」

「あー、うん、おはよう。・・・・おは、・・は?!」


自分の驚いた声とその驚いた時に揺らしてしまった頭のせいでまた激痛が走った。

思わず頭を両手で押さえる。



「っーー!」

「ほら、いきなり大声出して動くからだよ◆」

「誰のせいで・・・・、」


少し涙目になりながら、その特徴のある声の持ち主の方を睨むと低く笑っていた。

クラスメイト兼、幼馴染のヒソカ。制服のカッターシャツが第3ボタンまで開いていて一瞬どこを見ていいかわからなくなったのは秘密だ。



「なんでいるの?学校は?」

「あー、なんか行ったんだけど、出席とってた時にクロロがなまえが休みって言うし、授業も今日は面白くない日課だったから帰ってきちゃった◇それでなまえのお見舞い」


えへ、と笑うヒソカにツッコミを入れる気力も出なかった。

まぁでもお見舞いに来てくれた事には、ちょっと感謝した。病気の時に過ごす1人の時間は寂しかったのだ。



「皆も心配してたよ◇」

「え、うそ、ほんと?」

「ウン◆パクとかマチとかシズクがなまえの為にノートとっておいてくれるって」


そう言いながらヒソカは立ち上がる。良い匂いがしてきたのを考えると、どうやら私の為にお母さんが作って行ったおかゆを温めてくれてるみたい。

そんなヒソカと、優しい3人に心があったかくなった。


ありがとう、パク、マチ、シズク。愛してる。



「ちなみにノブナガはなまえが風邪ひくなんてって腹抱えて笑ってたよ◇」

「あいつ・・・・!」


キッチンの方からヒソカの声がした。

ノブナガの奴・・治ったら1番最初に殴りに行ってやる。ていうか斜め前だから後ろから攻撃しまくってやる。失礼にもほどが・・・!



「フィンも爆笑してた◆」


前言撤回。一発目はフィンだ。次がノブナ・・・、



「あ、そういえばフェイはノートとってくれる3人に向かって、なまえにノートとってやっても無駄って言ってたかな◇」

「・・・・・・・。」


もう誰から殴って良いのか分からなくなった。しかも残念な事に大方彼らの言い方も想像できる。ノブナガは・・・


「アイツが風邪?!ありえねぇだろ!ぎゃははっはは!」


と力の限り腹を抱えて笑っているだろうし、フィンは・・・



「なまえが風邪だぁ?馬鹿は風邪ひかねぇんじゃねぇのかよ。」


・・うわ、腹立ってきた。

フェイに至ってはもう・・・・



「パク、なまえのためにノートとるなんて労力の無駄ね。馬鹿だし、アイツきと文字読めないよ。」



・・・・・・・・・・・。



「あれ?どうしたの?空気澱んでるけど、頭痛い◆?」

「・・・・どちらかと言えば心が痛い・・。」


上半身を起こしたままの状態で力なくそう言うと、ヒソカはくすりと笑って傍にある小さなテーブルにお盆を置き、床に座った。



「生憎心に効く薬は無いんだよねぇ◇」


お盆の上に乗せたおかゆの入った小さな土鍋の蓋を開けた。ふわりと食欲をそそる良い匂いが部屋いっぱいに立ち込める。

小さな取り皿にヒソカはおかゆを盛っていった。



「でもね、風邪さえ治しちゃえばその心に効く薬もすぐ手に入るよ◆」

「へ?」


なんで?どこで?と首を傾げればヒソカはフフと綺麗に目を細める。

ある程度おかゆを盛った取り皿に息をふうふうと吹きかけて冷ましながらヒソカは言った。



「ボクは今まで学校行くのそんなに楽しくなかったけど、今は少し楽しく感じるようになった◆」


それはどうしてなのか、考えて答えも見つけたけど、それが正しいかはわからないし、認めたくないから結論は教えないけどねとヒソカは笑う。

暇なときに学校へ行っても今までつまらないと思うことが多かったけれど、今は暇つぶし程度にはなるとも添えた。


だからね、とヒソカは続ける。



「学校へ行って、皆に会えばきっと心もよくなる◇」



だってみんななまえと遊ぶの大好きだもの◇、と綺麗に笑うヒソカにドキンと胸が鳴った。

顔が熱いのは風邪のせいだと自分に言い聞かせる。


まともじゃないと恐れられてるヒソカがこんなにも優しくて、安心できる言葉をくれるなんて誰も知らない。



「だからおかゆ食べて、薬飲んで寝なね◆」

「・・・ウン。」

「じゃあボクが食べさせてあ・げ・る◇」

「い・や・だ!っーーー!」



とんでもない事を言い出すヒソカに全力で拒否をすると、また大声といきなり動いたせいで頭に凄まじい痛みが走った。




特効薬
(おかゆ美味しい◆?)
(うん。・・・・あれ、そういやヒソカどうやって入ってきたの?)
(・・奇術師に不可能は無いの◇)
(何言ってんの?)

****
ヒソカが学校へ来るのが楽しくなったのはなまえちゃんのおかげです。
学校なんてどうでもよかったけど、なまえちゃんを中心にノブナガ達がちゃんと学校に来るようになって、学校に行けば暇をつぶせるようになったからです。
なまえちゃんのおかげだよ、って言うのはなんとなく言いたくないようです。ヒソカったら意地っ張りなんだから←

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