HH:11月 ある授業風景
1限目、リッポー先生の化学の授業。ノブナガとウボォーが鼾をかいて爆睡していた。
2・3限目、メンチ先生の家庭科の授業にフィンクスとフェイタン、シャルナークが出なかった。
4限目、サトツ先生の地理の授業にマチとシズクが出なかった。ノブナガは爆睡しながら涎をたらしていた。
5限目、クロロ先生の国語の授業。
「(・・・・地獄絵図・・。)」
他の者達はともかく、居眠り常習犯のノブナガ、ウボォー、フィンの3人が両腕を組み、眠い目を必死に開きながら授業受けていた。
口元が隠れててわからないけど、そんな情景を見ながらフェイはニヤニヤしてる気がする。
「・・・・授業をしづらい。」
黒板に向かっていたクロロ先生はため息を1つつくと、こちらを向いた。
いつもならご飯を食べ終えて挑むこの5限目は、空いていたお腹も満たされ、温かい陽射しが差し、授業が始まればおやすみ3秒。
抜群のお昼寝タイムだ。
「・・・寝れば?」
横に座っているノブナガにそっと声をかけると、視線だけ私の方に移動した。怖い。
「クロロの授業で寝るわけにはいかねぇ。」
「・・・・なんで。」
「・・・・どうしても。」
腕を組む姿勢を変えず、また黒板の方へと視線を戻した。
クロロ先生もため息を1つついて、また黒板にノートに写させるための文章を書いている。
「じゃあノートとりなよ、少しは頭覚めるかも。」
この前シャルが眠い時は、一心不乱にノートを取って脳を刺激するか、思いっきりシャーペン(とくに0.3mmが効果的)を手の甲に刺すのが良いと言っていた。
手にシャーペンを刺すのは痛いので、とりあえずノートをとる事を勧めた。
「筆箱忘れた。」
「・・・・あぁ、今日手ぶらだったもんね。」
私は悪くないのに思わず「ごめん」と謝ってしまった。
それにしても眠いせいか、いつもの覇気が無い。
「わかんないなぁー・・・・。」
そう言葉を漏らして私は頬杖を付いた。
他の先生に対してどうでも良いというような態度をとるくせに、クロロ先生だけは別格と言う皆。
私だってクロロ先生は良い先生だと思うし、信頼はしているけど皆ほど先生を別格扱いできない。
「はみ出し者が集まるクラスをまとめてくれてるからな。」
ぼぉーっとしていると、誰にも聞こえない、私だけに聞こえるような声量でノブナガが言った。
ビックリしてノブナガを見ると、頬を人差し指で掻いている。
「クロロは俺たちを見捨てなかった、というか・・・・。」
それもちょっと違うな、とノブナガは少し悩んだ素振りを見せた。
「好きなようにしろ、って言ったんだよ。」
ふと後ろから聞こえた声に振り向いた。
後ろの席はシャルが座っていて、シャルもまたさっきの私と同じように頬杖を付いている。
「学校に来ない、来ても遅刻もしくは勝手に早退、勉強が出来ないやつもいる、逆に勉強が出来てしまって学校に来る意味を見出だせなくて来ない奴もいる、すぐにケンカする。・・・・そんな俺たちにクロロ先生は好きにしろっていったんだ。」
なんだかちょっと笑えない?とシャルは珍しくとても楽しそうに笑った。
確かに笑える・・というかなんだか無謀な発言、というか。
クロロ先生も大胆な事をいうもんだと思った。
暴れまくる問題児に「好きにしろ」だなんて。普通は「やめろ」とか「いい加減にしろ」とか怒るはず。
あの先生はやっぱりちょっとわからない。
「それにもう1つ、なまえも言われなかった?」
「なんて?」
聞き返すとノブナガ、シャル、それに話を聞いていたらしいノブナガとは逆隣のマチが口を開いた。
「「「クセはある。けどお前たちだって、他のクラスの奴らと他に変わるところは何も無い。」」」
ノブナガ達は笑った。
はにかむ様に、とっても嬉しそうに。
あぁ、そうか。
彼らは他の皆と見る視線と、自分を見る視線と同じ高さで見てほしかっただけ。
ただそれを素直に出来なかったのは、『不器用』だったから。
「そう、だね。」
私は私に対して言われたわけじゃなかったけど、確かにこのクラスに入る前にクロロ先生に彼らが言っていた事を言われた。
それはお前も同じ目線になって本当の彼らを知れということだったのかな。
「・・・・お前らさっきから何を話してる。」
私たちのヒソヒソ話を聞きつけたクロロ先生は教科書片手にこっちまで歩いてきた。
「別に。あの文字読めないってなまえが言ってたから。」
「ちょ、ノブナガ?!あたしいつそんなこと言った?!」
「ほぉ。また居残りしたいのか。」
「勘弁してよ・・・・!」
ある日の5限目。
Sクラスには笑い声が響いた。
落ち葉散る季節の中で (読める!読めるよ先生!) (じゃあ読んでみろ。) (・・・・・。) (今日残れ。)
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