SD:10月 中間
「あー・・助けてくれ、もうムリ、死ぬかもしれない・・・・。」
「頑張れ、俺の家にわざわざ来て勉強してるんだ。」
「タケちゃん・・・・。」
時は夜中。
私の目と頭と体力は限界の頂点に来ていた。
全く使われていない脳は、勉強すればまるでスポンジが水を吸うように知識を吸い取っていく、というのが一般的に言われている事だが私は違った。
脳が知識の吸収を極端に拒んでいるのか勉強すればするほど頭が痛くなる。
その上勉強に対する集中力もない。最悪だ。
「今更ですけど赤木さんがタケちゃんって呼ばれるのもなんか微妙ですね。」
「やだな、仙道。ギャップがいいんだよ。」
横で適当に教科書を読んでいた仙道が突っ込むと私はチッチッチ、と人差し指を横に振った。
「馬鹿モンどもが!ギャップなんぞどうでも良いから早く知識を頭に詰め込め!」
「赤木、そう夜中に怒鳴らんといて。」
ご近所迷惑やわぁ、とゴリラの化け物かと思うほどに怒鳴ったタケちゃんの横から眠そうな声で土屋が言う。
そんなツッチーの発言にタケちゃんはブチリと額に青筋を浮かべた。
「土屋と仙道!そもそもなんでお前らも俺の家にいるんだ!」
「今日はなまえちゃんと一緒に勉強したい気分だったんで。」
「家の鍵忘れてん。親今日いないから家には入れへんねん。」
ニコニコ笑う仙道と、泊めてや☆とキャピキャピするツッチー。
あ、タケちゃんの額に青筋が。・・・・あぁ、どんどんゴリラ化してる。
「た、タケちゃんタケちゃん。ここがわからない。」
ゴリラ化を止めるべく、とりあえず問題集のわからない箇所を指差した。
問題集を見るだけでそこらじゅうからわからない問題が見つかるからラッキーだ。
「む・・?・・・・たわけが!さっき教えたのと論理は同じだ!」
「えぇぇぇ?!嘘?!全然違うよ!さっきのどうやって使うわけ?!」
「お前には応用力が足らん!」
夜中にギャーギャーとうるさいかなと思ったけど叫ばずにはいられない。
ハルちゃん大丈夫かな?今ので起きちゃったかな?あんな可愛い子のお肌が寝不足で荒れちゃったら大変だ。と思いつつもタケちゃんに抗議する。
「私は全力で問題解いて・・・・、って仙道!ツッチー!私を置いて夢の世界へダイブしないで!」
特に仙道あんた私と勉強したかったんじゃないの?!と机に突っ伏して寝ている2人が目に入って2人の肩をガクガク揺さぶる。
全力で揺さぶる。
「こいつらは阿呆だがちゃんと赤点は避けている!テスト前は適度な睡眠が必要だ、寝かせとけ!」
「適度な睡眠?!じゃあ私も寝る!」
「バッカもん!お前は寝れると思うな!」
「なんでよー!」
「お前にはもう後が無いだろう!卒業できなくなっても良いのか!」
「う、それは・・・・・、」
困る、と眉を下げた。
私の頭に犬の耳かウサギの耳が付いていたら確実に垂れ下がっている。
そんな私を見てタケちゃんは1つため息を零した。
「いいか。お前は阿呆で馬鹿だがクラスの皆はお前を好いているんだ。」
「・・・・褒めてる?」
「だからお前が3年の奴ら皆と卒業できなくなったら皆が悲しむだろう。」
1、2年の奴らは喜ぶかもしれんがな!とタケちゃんは両腕を組んだ。
私の問いかけを無視したことはこの際置いておこう。
タケちゃんにこんなこと言われるなんて思っていなかったから。
凄く嬉しい気持ちが無視された複雑さをはるかに上回っている。
「・・・・がんばる。」
「あぁ、頑張れ。」
タケちゃんの不器用な優しさは何だかほっとする。
バスケットマンらしい大きな手のひらで私の頭をガシガシと撫でてくれた。
がんばれ、あとちょっと
(・・・・難しい。) (これはこうだ。) (・・・・おぉ、なるほど!さすがタケちゃん!)
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