夢物語
「この学校にはときめきが少ないと思うの。」
「なにお前頭沸いたの?」
「シャラーップ。」
ある日の昼休み。昼食を食べてぼーっとしていた時に思ったことを思わず口に出した。
そしてその発言に藤真が口を入れる。失礼極まりない発言をしやがった藤真に一喝すれば、なんだなんだと周りにいた暇人たちが集まってきた。
仙道、宗くん、南くん、楓、それプラス藤真。なんて異色メンバーなんだろう。まぁこのクラス自体が異色なんだけれど。
「何してるの?」
「宗くんちょっと聞いてよ、藤真が失礼なの。」
「今に始まったことやないやん。」
「聞き捨てならねぇな。」
正論を言ってくれた南君に藤真が暴言を吐いた。許すまじ藤真。どうしてうちのクラスにはこういう失礼な奴しかいないのだろうか。
そりゃぁ紳一や亮ちゃん、武ちゃんや魚ちゃんなんかは紳士だし優しいけど(たまに殴られちゃうけどね!)藤真を初め、このクラスには失礼極まりない奴が多すぎると思います。
ぶつぶつぶつぶつ自問自答している私を藤真はじっと見ていた。その視線に気づいて藤真を向けばすっごく自信たっぷりに自分を指してこう言った。
「ていうかこんなイケメンが目の前にいんのにトキメキが少ないなんて言わせねー。」
「なに藤真あんた頭沸いたの?」
ここぞとばかりに言われたことをそのまま言い返せば藤真は口をぴくぴくさせてニッコリ笑った。私もニッコリ笑い返してやる。
そんな様子を楽しそうに眺めていた仙道が口を開いた。
「どうしていきなりそんなこと思ったの?」
「いやぁ、昨日すっごいキュンキュンする洋画を観たの。で、恋愛っていいなぁー、恋人っていいなぁーって思って考えてたらこのクラスにはトキメキが少ないという結論に至りました!」
「へぇ。」
「ちょっと宗くん何その興味なさそうな相槌!」
「どあほう。」
「ちょっと楓何その直接攻撃!悲しい!」
ちょっとこれでも私あんたたちより年上なんだからね!と言えば凄く残念そうな顔をされた。
年上だろーがなんだろーが、このクラスに居れば部活に入ってない人間に上下関係など無い。そんなことこのクラスに入った時点でわかっていた。
でも悲しいよね、敬われないって。もう敬われなくていいからせめて可愛い女の子と過ごす時間を増やしてほしい。このクラスの大半は男だから本当にむさ苦しくてならない。
私はこのクラスの少ないうちの花の1人であるというのに全く大切にしてもらえない。むしろ小ばかにされている。
こんな事が許されて良いのだろうか。いや、許してはならない。
長考の末、私が考え出した答え。このクラスの男子に必要なのはやっぱり優しさと気遣いだと思うんだ。
「ということで晴子ちゃんとか彩子ちゃんとか可愛くて優しい女の子はいるのに、どうして格好良くてまともな男がいないの!」
不思議でならないわよ・・!とばんばん机を叩いた。
ということで、という出だしにクエスチョンマークを浮かべながらこっちを見ている5人を見れば最初に口を開いたのは藤真だった。
「赤木の妹とかが可愛いのは認めるけど、まともな男がいないっていう部分は納得できねぇ!」
断固否定します!と藤真もばんばん机を叩いて私に抗議する。
他のクラスでは藤真は王子なんて言われてるけど本当にみんな騙されている。確かに私も今年Sクラスに入るまで藤真は「あぁ、なるほど王子なんだ、カッコいいもんね」と思っていたけど、みんな目を覚ましてほしい。こんな大人気ない王子がいてたまるものか。
「あーはいはい。2人共落ち着いてくださいよ。」
「ほんまやで。神の言うとおりやわ。」
「だーってトキメキがあああ!」
「うるせー。」
宗くんと南君と楓にたしなめられてちょっとは大人しくしたけれど、憧れは消えない。藤真と子供じみた言い合いしたせいでむしろ大きくなった。
女の子が少ないこのクラスは必然的に男の子との会話や行動が多くなるから慣れが生じてしまうのも受け入れざるをないけどさ。
私だって女の子だし、何より女子高生。花の女子高生!制服デートの1つや2つしたい!
彼氏と一緒にお昼ご飯を食べたいし、放課後デートしたい。一緒にテスト勉強したいし、自転車の二人乗りとかもしたい。
夢持ったっていいじゃない!と再び机をばんばん叩けば、そんな様子を見ていた5人が顔を見合わせてそして藤真がふぅ、とため息をついた。
「わかった。なまえ、俺たちが夢を叶えてやる。」
「え、マジ?」
「マジマジ。」
嘘じゃねぇよ、と藤真はにっこり笑った。
ちょっと藤真が誰か紹介してくれるって。この人たちの優しい部分を久々に垣間見ることが出来た気がする。
うきうきうきうき、藤真が再び口を開くのを待っていたら、にっこり笑った藤真はこう言った。
「昼飯はその辺の男子連れて来い、清田とか。放課後デートは俺たちバスケ部の買出しの手伝いな。テスト勉強は岸本とか三井とか桜木とかといつも通り補習すればいいし、自転車の二人乗りは・・そうだな・・・・。」
流川、帰りにでもついでに乗せてやれよと藤真が言えば何だか嫌そうに流川がこっちを見ていた。
夢見る世界にほど遠い
(えぇ、楓の後ろやだ!) (なんでだよ。) (絶対居眠り運転でしょ!わかってんだから!ていうか誰か紹介してくれるんじゃないの?!) (はぁ?何の話?)
*** 久々にピーター書いたらなまえちゃんが暴走しました。
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