SD:9月 文化祭
「はい、これ景品ねー。」
「ありがとう、おねえちゃん!」
バイバーイ、と私から景品を受け取った小学校低学年くらいの男の子がお母さんと一緒に去っていった。
あぁ可愛いな。私もあれ位の時期は近所のおばちゃんからモテモテだったんだけどなー、なんて思ってみる。
・・・・やめよ。今と比較すると悲しくなってきた。
「なまえ、景品足りそう?」
「あ、宗くん。」
受付からやってきた宗くんに問われて景品ボックスを見ると、みんなで持ち寄った景品がまだそれなりの量が残っている。
うん、なんとか足りそうだ。
「大丈夫だと思う。」
「それなら良かった。」
射的やってるのに景品なくちゃ始まらないもんね、と宗くんは綺麗に笑う。
「でもホント、このクラスの射的ルールはお客さんに説明するのが楽で助かるよ。」
「なんて言ってるの?」
「全力で水鉄砲を的にぶっぱなしてください。」
「・・・・あぁ。」
そうですか、と私は思わず乾いた笑いをこぼした。宗くんは大人っぽいのに、たまに少し大雑把な所があって面白い。
「そういえばノブは?」
一緒に受付だったよね?と聞いてみる。
宗くんはにっこり笑んだ。
「ほら、文化祭って購買で普段売ってないものとか売るじゃない?その中に氷イチゴっていう飲み物があるんだけど、それ飲みたいから買ってきてって今買いに行かせてるんだ。」
「・・パシリ・・・・。」
「違うよ、ノブが行くって言ったの。」
ニコニコと笑う宗くんにこれ以上何も言わなかった(言えなかった)
ちなみに氷イチゴとはどんなものかと聞いてみれば、氷自体がイチゴシロップで出来ていて、それをコップに入れ、牛乳を注いだものらしい。
美味しそうだな、あとで私も買ってみよう。
「意外に宗くんって甘いもの好き?」
「まぁまぁ。でもとりあえず珍しいものとかは手を出したくなるタイプ。」
「あ、じゃああれだ。コンビニとかで限定中華まんとか出たら買っちゃう人だ。」
「そうそう。」
あれ美味しいよね、と宗くんと話をしながら受付に戻ってみる。今はお客さんが居ないけど、受付ノートを見るとそれなりに人は来ていた。
前半はゴツいのばっかりで人があんまり来なかったようだけど、私たちの1個前の仙道・藤真・牧ペアの時は結構な人数が来ていたみたい。すごいな、3強。
「私たちもあと10分で交代だよね。次誰?」
「えっと、南さんと諸星さんと土屋さんみたい。」
「・・うわ、なんか濃い・・・。」
「そういうこと言わないの。」
次のグループのメンツを想像するとなんとなく笑いが込み上げてきた。
そんな私を宗君は苦笑いしながらたしなめる。でも宗君も少し笑っているから全然説得力がない。そう思うとさらにおかしい。
こんなくだらないことで笑ってしまうなんて、文化祭というシチュエーションの中にいるだけでテンションが上がってしまっているんだろうか。
疲れたので私も受け付けの椅子に座ろうとしていると、ちょうど違うノブが氷イチゴを持って帰ってきた。
「ただいまっすー。」
「あ、ノブ、お帰り。」
「ただいまです!はい、神さん!氷いちご!」
「ありがと。」
「なまえさんにも!」
「うあああ!ありがとうノブ!超いい子!」
だしょうー?と嬉しそうに笑うノブの頭に手を伸ばして乱暴に撫でてあげた。
買いに行かずにすんでラッキーなんて思いながらノブから貰った氷イチゴを飲む。
甘酸っぱくて、牛乳のおかげで濃厚な味が凄く美味しかった。
もう少しして交代になったら、ノブと宗君と一緒にほかの教室の出し物でも見て回ることにしよう。
楽しい青春の1ページ
(今年のミスターとミス誰だろうね?) (俺ですかね!) (ノブではないよ、きっと。)
※ミスター/ミス:学校内で一番カッコいい人/可愛い(綺麗)な人
|