HH:9月 文化祭

「・・・・お前ら何をやっている。」

「え、見ればわかるじゃないですか。」



「「「「射的ー。」」」」






今の状況をどう説明してやろう。まずは・・・・、そう、始業式から始まる。


他のクラスは1学期の終わりにすでに決まっている文化祭の出し物を全く決められなかった俺の受け持つSクラスは、始業式の放課後に全員強制居残りを命じて出し物を決めさせた。

だが俺は午後に出張があり、その話し合いには参加せず「勝手に決めて生徒会に今日中に企画書を提出しろ」と言ってその場を去った。


それが間違いだったのか。



「よく生徒会が射的なんてOK出したな。」

「んーまぁそうですねー。」


近くに居たみょうじに呆れながら問えば間の抜けた返事が返ってきた。



「でも射的と言っても、カッコいい言い方してるだけで。」

「実際は水鉄砲なんだぜ。」


ノブナガが引き金を引けば、ピュー、と上に水を噴き上げる。

そんな様子を見ながら俺は1つため息をついて傍にいたパクノダに問いかけた。



「企画書になんて書いたんだ、パク。」

「『古き良き時代の遊びを知る』と書いたら即OKでした。」

「・・・・物は言いようだな。」


委員長であるパクノダが書いたであろう企画書の内容を本人に問えば、あながち間違いではない内容の答えが返ってくる。

確かにフィン達が使っている水鉄砲の中には竹の筒で出来た水鉄砲もあるし、『古き良き〜』の部分に間違いはない。


それにカラフルな見た目からしてオモチャなのはわかっていた。まあまず本物に近いものを持ってこられたりしたらただ事ではないんだが。



「ルールは?」

「全力で的に命中させる。」

「・・・・・。」

「何で黙るんですかー。射的ってそんなもんでしょ?」



みょうじはケラケラと笑いながら水を的に撃った。


初はこのクラスに入るのを心から嫌がっていたから一時はどうなるかと思っていたが、ここまで楽しそうに笑えるようになったんだから俺の作戦は成功と言っていいだろう。

みょうじは馬鹿なのがたまに傷だが、人をひきつける魅力がある。

去年のSクラスはバラバラすぎて俺もまとめるのが大変だったが、こいつが来たおがげでいくらかまとまりが出てきた。

馬鹿とはさみは使いようというのは本当だった。なんて言ったらみょうじが傷ついてしまう可能性があるので心にとどめておく。



「で、俺はさっきから思っていたんだが。」

「何ですか?」

「・・・・客が1人もいないんだが。」



他のクラスには沢山の一般客で溢れかえっているというのに、Sクラスの周りだけ人っ子一人いないというのはどういうことだ。

いや、あらかた想像できるが・・・・・・。



「いや、なんかウボォーとフランクリン筆頭に皆がデカくて無駄に迫力があるのと、ほとんどの奴が目つき悪いのが怖いみたいで皆寄ってこないんですよ。」



・・・・やっぱり。


みょうじは暇ですねー、と銃をくるくる回す。

最初から期待はしていなかった。きっと今年もクラス別客引きランキングは最下位だろう。




「ぶっは!てめぇフェイタン!俺に向かって撃ちやがったな?!」

「ハ。ワタシが撃つ方向にノブナガが居ただけね。ワタシ悪くないよ。」

「んだと?!」

「やるか?」


そしてケンカが始まる。

今回は殴り合いじゃないだけまだ良い。



「うっわ冷てぇ!」

「地獄に落ちるね!」



・・・・いや、良くない。教室中水浸しだ。

なんでこいつら外に会場設置しなかったんだ。

あぁそうか、聞くまでもない。暑いのに外に会場なんか作れるかっていうオチだな、確実に。


最初来る時は客が来てるか心配になってたが、今はそんなことどうでも良い。



「お前らそこに正座しろ。」



とりあえず説教を開始しよう。



楽しくやれればそれでいい

(だがしかし節度を守れ)
(おう。)
(チッ・・・・。)
(フェイ、舌打ちするな。)

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