SD:8月31日 仁義なき戦い

今日は8月31日。

明日は言わずともわかる。そう、始業式だ。それなのに自由研究という名の夏休みの宿題最大の天敵が終わっていない。



「朝顔の観察。」

「昆虫採集。」

「アリの観察。」

「読書感想文。」

「読書感想文は自由研究じゃねぇよ馬鹿。」



上から私、洋平、深津、栄治、みっちゃん。

学校近くのファミレスに集まった私たちは5人力を合わせて自由研究をしようということになった。そのため、何をやるか1人1つ何かしら挙げてみたけどこれっていうのが見つからない。



「朝顔の観察なんてもう無理だろ。今日しかないんだぜ?しかももう昼だし。」

「あ、そうか・・・・。でも昆虫採集は嫌。虫持ちたくないもん。」


アイスコーヒーを飲みながら私の発言にツッコミを入れる洋平に私も言い返す。



「1番無難だと思うけどな、昆虫採集。『学校の周辺に住んでる虫!』みたいな。てか深津さん、アリの観察って何?」

「ガラスの板を2枚使ってそのガラスの間に土を敷き詰めて、アリを入れてどうやって巣を作るか観察する研究だピョン。」

「おお、それ面白そう!」


洋平は深津に話をふると自由研究内容を聞き出す。それに目をキラキラさせて興味を持つのは栄治だった。



「でもそれも今日1日じゃ無理だろ。」

「・・ぴょん。」

「あ、わりぃ。そんな顔すんなって。」


ミッチーのツッコミにちょっと悲しそうな顔をして力なく口癖を出した深津にミッチーは焦って深津の背を撫でた。


その横で私はさっきドリンクバーから持ってきたオレンジジュースを飲む。



「んんんんんー、どうしよう。私まだ他の宿題も残ってるから早めに終わる自由研究希望なんだけど。」

「俺も終わってねぇんだよ。」


深津を慰めていたミッチーは私の方に視線を向けて深くため息をついた。



「ていうかこのメンバーは皆終わってないよ。」

「いや?俺はあと自由研究だけだぜ?」

「俺もだピョン。」


何?!と私とミッチーと栄治はとんでもない発言をしてくれた洋平と深津の方へ一気に視線を向ける。



「ちょ、深津はわかるけど!なんで洋平が?!」

「そうですよ!なんで水戸さんが!」

「お前不良の風上にも置けねぇ奴だな!そのリーゼント直して来い!」

「お、お前らなぁ!」

「・・・ピョン。」


ギャアギャアとわめき散らす私たちはファミレス側にとったら大迷惑この上ない気がする。

明日にはブラックリスト入りかな?何て考えつつも大声を出さずにはいられない。



「安心しろよ。花道たちは終わってないぜ?」

「花道は私の事絶対裏切らないからわかってる!」

「・・・・その言い方もなぁ。」


洋平はストローを口に含み、眉を下げて笑った。



「そういえば、あと誰が終わってないんだろ。みんなに電話して皆で協力した方が早くない?」

「俺が知ってんのは俺を抜く花道軍団と流川、あと宮城さんも終わらねぇ!って泣いてたな。」

「リョータ・・・・。深津は誰か知ってる?」

「岸本と清田と高野が終わらないって言ってたピョン。」

「あいつ等は終わらねぇっていうより問題読めねぇんだよ。」

「コラ、ミッチー!そういうこと言わない!」


隣に居たミッチーを軽く怒るとミッチーは両腕を頭の後ろに組ませて背もたれに寄りかかった。



「にしても、仙道さんとか藤真さんは意外にも終わらせてるんですね。」


俺ビックリっす、と栄治はカルピスを飲んだ。可愛い。



「ああ、たぶん仙道さんは越野さんに無理矢理やらせられたんですよ、たしか。それに藤真さんたちもなんだかんだでやるみたいですし。しかもタッグ組んで。」

「というと?」


洋平の発言に栄治は頭にクエスチョンマークを浮かべる。



「つまり、俺がお前の分も数学のドリル終わらせてやるから、お前俺の分の作文もやれ、みたいな。」

「ああなるほど。」

「ちなみに数学はこのやり方だと相手からの注文でほぼ間違えさせとく、それなりに間違えさせとく、できるなら全問正解させとく、の3パターンからチョイスできる。」

「・・・・アンタなんでそんな詳しいの。」

「お前もよくやるだろ?」


横から口を挟むと洋平は悪戯っぽく笑った。



「それにしてもあれだな。少し離しズレたけど、即戦力になりそうな奴1人もいねぇな。」


ミッチーは机にひじを突いて頬杖をする。



「これなら私たちでどうにか終わらせた方が早そうだね。」

「そうっすね。」


栄治も私と同意見のようで首を縦に振った。ということで宿題が残ってる面子を呼んだら余計に宿題が進まなくなるという結論に達したので、皆合意で呼ぶのは諦める。


すると深津がピョン、と口を挟んできた。



「さっきから考えてたんだが、図書館行って星座の本丸写しするのはどうだピョン?」



一瞬、静寂が訪れる。

そして次の瞬間には歓喜の声がファミレス中に響いた。




宿題は計画的にやりましょう

(ふ、深津さん・・・・!あなたって人は・・・!)
(それなら5人でやれば1時間で終わりそうっすね!)
(深津!ナイスアイディアだよ!)
(グッジョブ、深津!)
(ピョン。)

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