拝啓、織姫様

「お願い何にしようかなぁー!」


うきうき、ペンを手に持って思わず口に出した。


今日は七夕。お願い事を1つ、短冊に書いて笹にくくりつける。ここ数年、そんなイベントはやっていなかったけどクロロ先生が意外にも笹を持ってきてくれた。

ビックリして思わず熱があるのかとクロロ先生のおでこに手をやって怒られたけど、イベントごとを大事にしてくれる先生に感謝した。

けれどさっき聞いた話、Sクラスではこの七夕イベントは毎年行われてるらしい。



「当たり前だろ!テスト期間だぜ!神に頼まずに誰に頼むんだよ!」

「フィン、織姫様は神じゃない。」

「は?天帝の娘でしょ?神に等しい存在なんじゃないの?」

「う・・そう言われると・・・・。」


シャルの反論に言葉を詰まらせた。正直七夕の話なんて絵本でしか読んだ事が無いからよくわからない。シャル自身もそうらしくて珍しく強く責めてこなかった。



「そんなもん、どちだていいね!」

「フェイの言うとおりだぜ。さっさと願い事書かねぇと。」


昼休み終わっちまう、とノブナガがペンを持った。みんなもそれぞれ違う色のペンを持って短冊と向き合う。

ちょうどその時、教室の扉ががらりと開いた。



「オハヨー◆」


入ってきたのは幼馴染のヒソカだった。ほとんどつぶれた革バッグを左の脇下に挟んで伸びをしながら扉を開けていた。

今日は珍しくオールバックではなく髪を下ろしている。不覚にもカッコいいと思ってしまった。悔しい。



「なーにがおはようだよ。もう昼飯食う時間も過ぎてんだよ!」

「寝坊しちゃってね◇」

「来ただけ奇跡ね。」


ウボォーのツッコミにヒソカはテヘ、と笑った。フェイはどうでも良さそうにため息をついて短冊から目を離さない。

近づいてきたヒソカにおはようと挨拶するとヒソカもおはようと返してくれた。



「それにしても本当によく来たね。」

「ウン。なまえに会いたくなってね◆」

「な・・!ば・・・・!」

「何馬鹿なこと言ってるのって言いたいのかな◇?」


よしよし、と頭を撫でられた。悔しい。

ヒソカは自分の鞄を置きに1度自分の机へ行くと、すぐにこちらへ戻ってきた。ノブナガと私の間に椅子を持ってきて座り込む。



「で、今年も短冊かいてるの◆?」

「おー。お前も書くだろ。」


おらよ、とノブナガは水色の短冊と黒のペンをヒソカに渡した。ヒソカは受け取るとペンの蓋を開ける。

ヒソカがお願いごとかぁ・・何書くんだろう。凄く気になる。だって地元じゃ「声をかけない、目を合わせない、機嫌を損なわせない」の三原則で通ってるヒソカだよ?短冊にお願い事を書くなんて想像もしなかったよね!


じーっと見ているとヒソカは私の視線に気づいたようで私を見た。



「ボクが何書くか気になるの◆?」

「うん!」

「ヒミツ◇」

「えぇー。」


そりゃないッスよー!と騒いでもハイハイ◆で片された。本日3回目だが言わせて頂きたい。悔しい。



「オラそこ!イチャついてないで早く短冊書けよ!」

「い、イチャついてなんかないもん!」


フィンがペンを私に投げ飛ばしてきたのを間一髪で避けた。ヒソカの方へ飛んでいったのはヒソカが軽々と止めていた。

でも確かにそろそろ昼休みも終わるし、早くくくりつけないといけない。

どうしようかな、なににしようかな。叶えたい願いは沢山ありすぎて選べない。うーんうーん、ひたすら悩んでいるとみんな書いた短冊を笹に結び始めた。

シンプルだったただの笹が色とりどりの短冊でお化粧されていく。

すると短冊をつけていたノブナガが「あ!」とでかい声で叫んだ。



「なんだようるせぇな。」

「ウボォー!次体育じゃねぇか!」

「あ゛!」


ノブナガの発言に黒板の隣の時間割を見ると体育の2文字。国語担当のクロロ先生の授業と同等、皆がサボらない授業だった(だって全力で運動できる上に唯一評定5を取れる科目)



「早くグラウンド行くぞ!」

「先に更衣室でしょ!着替えどうすんの?!」

「バカ!俺らは男だぞ!」


走りながら着替えるわボケェ!とみんな体操着を持って教室を慌しく出て行った。私も早くしないと遅れてしまうので急いで願い事を書く。



「なまえ、遅れるよ◆」

「うん!すぐ行く!」


書いた短冊を背伸びして笹に結ぶと、ロッカーに入れてある体操着を持って更衣室へとダッシュした。



拝啓、織姫様
これからもみんなと、楽しく過ごせますように

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