HH:8月22日 ある夏の日

「ぅわっちぃー・・・、」

「なんでクーラーねぇんだよ、ありえねーだろ。」

「文句あるなら帰れ。」


フィンとノブナガに私は力なく一喝した。



むしろ帰ってくれ。


心の中で一言付け加えて、口に出さない私はなんて優しいんだろう。

シャルに至っては家に来た瞬間に一直線にキッチンへ行き、冷蔵庫を開けてアイスコーヒーを一気飲みしてくれた。彼にはもう何も突っ込むまい。



そうそう、何故我が家にこいつ等がいるかと言えば、みんな揃いも揃って「うちのクーラー壊れた」だの、「家にクーラーがねぇ」だの、ただただ「暇」だの・・・・。

うちは溜まり場か。



・・・・にしてもムサい。ムサすぎる。

けして広くないうちのリビングにフィンとウボォーとノブナガとフランクリンとシャル。

ただでさえ男ばかりでムサいのに5人の内2人のサイズがビッグバンなのが非常にいただけない。

来るならマチ達に来てほしかったなと思う。優雅に麦茶でお茶会を開催したかった。



「なぁ、アイス食いたくね?」

「いいね!」


力なくソファーに寝ころんでいた私は、ポツリとこぼれたフィンの提案に勢いよく起き上がった。


「ただ買いに行くのもあれだし、じゃんけん負けた奴がみんなにアイス奢りってのはどうよ?」

「さんせーい!」

「ここはもうケチって2人で1つパプコ!なんてのは無しでいこうぜ。」

「おー、当たり前だろ。」

「何にするんだ?」


フランクリンの問いかけに皆は一瞬だけ黙って何のアイスにするかを考える。

奢りじゃんけん=勝負事にみんなのテンションが上がり始めていた。


一時の静寂を越えて一気に皆が口を開く。



「パロパロ。」

「ゴリゴリくん。」

「ジャイアントカーン。」

「ピニョ。」

「スイカボー。」

「バーゲンダッツ。」


バーゲンダッツ、笑顔でそう言ったシャルの方へ皆が一気に視線を向けた。



「馬鹿!バーゲンダッツ1ついくらすると思ってんだ!」


暑さにダレていたノブナガが勢い良く立ち上がってシャルを指差しながら叫んだ。

ノブナガの発言にシャルは小さく呆れたようにため息をついて笑う。



「なまえの言ったパロパロだって値段的にそう変わらないでしょ。」

「だ、だってパロパロのラムネ食べたい・・!フィンの言ったゴリゴリくんはいつでも食べられるし。」

「ゴリゴリくんナメんな。低カロリーかつ70円ありゃどんな店でも買えんだからな。それにノブナガの言ったジャイアントカーンは昨日食ったから嫌だ。」

「ば・・!お前自分の都合かよ!ていうかウボォー!お前その巨体でピニョとかふざけんなバーカ!」

「体のデカさは関係ねーだろうが!」


だんだん収拾が付かなくなってきて問いかけたフランクリンは頭に手をやってため息をついていた。


ちくしょう、こいつらいきなり人の家になだれ込んできたと思ったらケンカおっぱじめやがって・・・・!

もうこのままじゃ埒が明かない。こうなったら・・!と私は勢いよく立ち上がった。



「ああもううるさい!アイス無し!ちょっとノブナガ手伝って!ペンペン出す!」


座っていた腰を上げてノブナガの傍まで行き、思いっきり首根っこを引っ張ってやった。



「はぁ?!ちょ、ひっぱんなって!何だよペンペンって!」

「愛しい愛しいカキ氷機!」

「お、いいねぇ!」


ウボォーはヒュウと口笛を吹いた。


さあ、暑い暑い戸棚の奥から、愛しのペンペンを引きずり出そう。




夏の終わりが近づく前に

(おい、そういやシロップは?)
(・・・・あ、麦茶かける?)
(死ね。)

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