SD:7月 恐怖の期末

「終わった・・・・!・・いろんな意味で・・・・!」

「おー、ごくろーさん。」

「ごくろーさん、じゃないよ越野ー!」


呼び出しだ、絶対親付きの呼び出しだ!と頭を抱えてしまった。


どうして私はこんな残念な頭をしてるんだろう。

誰だよ、寝る前に暗記物をやればそのまま記憶されるって言った奴。出て来い。それを信じて寝る前に暗記物を詰め込みまくって撃沈した私に土下座をしてくれ。



「それは日々継続してやれば効果が出るよって話で一夜漬けじゃどうにもなんねぇんだぜ。」

「・・・・うそ!?」

「本当。」


まぁ一夜漬けでもやらねぇよりマシだけどな、と越野は椅子の背に体重を掛けて伸びをした。私は絶望した。



「・・・・もういい。岸本と一緒に怒られる。」

「岸本さん付きかよ。」

「岸本は絶対私を裏切らないんだよ。呼び出しのときは絶対一緒。」


もうお互いの親同士まで仲良くなってしまいました、と言ったら越野は腹を抱えて笑った。

笑い事じゃないよ!と越野の頭をわしゃわしゃやってやったら「悪い悪い」と笑い涙を拭きながら謝ってくる。



「あー、でもどうしよう。本当に出来なかった。2桁いくかな?」

「は?それはいくだろ。」

「あ、言ったね?いける人はいいわよ。けど行かない時は本当に2桁行かないんだから。出来たと思っても出来てなかったりするんだからね。それなら最初から出来なかったと思ってた方がショック小さくて済むじゃない。」

「お前マジだな。」

「私はいつでもマジだよ。」



はぁ、と机にひじを突いて小さくため息をついた。越野はカバンの中からがさがさと紙を取り出して眺めている。


ちくしょう、今日はもう家に帰って不貞寝を・・・



「あ、そうか。明日英語と数学と物理か。」

「・・・・は?!」



忘れてた、と呟く越野の方を思わずガン見した。とんでもない3つの単語が聞こえたからだ。

英語?数学?物理?え、何それ美味しいの?

・・・・なんてふざけてる場合じゃない。



「英語さっきやったじゃん!数学この前やったじゃん!何言ってんの?!」

「・・・・落ち着け。」

「落ち着いてなんかいられないって!え、何事?!」

「どういうことやねん!越野ォ!」

「あ、岸本。」


大声で机を勢いに任せてバン!と叩いたらその瞬間に岸本がいっぱいいっぱいの顔をして現れた。

あ、目が少し赤い。



「どういうことって・・・・。この前やった数学は基礎数学で明日やる数学は応用数学だし、今日やった英語はリーディングで明日やる英語はライティングっすよ。」



岸本が来たから敬語になった越野。

いや、そんなことはどうでもいい。マジでどうでもいい。なんで2種類ずつ作るんだ教師ども・・・・!



「あかん・・・・明日休む。もう俺無理や・・・・。」


ふらふらとよろけてショックを隠せていない岸本は右手のひらを顔に押し付けた。



「岸本!休んだら0点だよ?!もうカンでもいいから埋めなよ!0点は回避できるって!0点取ったら後から点数稼ぐの辛いって!」

「ふっざけんな!こっちはこの前の数学でいっぱいいっぱいやったねんぞ!あれで基礎?!応用はどうなるっちゅーねん!」

「そ、それは私も一緒だけど・・・・!」

「しかもさっきやった英語はリーディングで明日やる英語はライティングです、やと?!さっきやったリーディングのテスト英語書いたで?!あれがライティングってやつちゃうんか?!リーディングって読むって意味やろ?!読めんかったけどな!」



・・・・岸本の言いたい事は凄くわかる。

確かにね、リーディングのクセに音読とかじゃなかったしね。あれがライティングだって言いたい気持ちはよくわかる。

てかリーディングもライティングも一緒の英語でしょ。なんで一緒にしないの。




「しかも俺物理なんて物理っちゅう単語しか聞いたことないねんぞ!」

「あ、だって岸本さんは理系じゃなくて文系じゃないですか。文系の岸本さんとなまえは日本史ですよ。」

「日本史・・・・!」



丁寧に答えた越野の言葉に岸本はまたよろけた。

そして私たちが心配して岸本を見てる中、岸本は岸本なりに落ち着きを取り戻して静かに声を振り絞る。



「なまえ・・・・。」

「・・・何?」

「日本史範囲どこや・・・・。」

「・・・・忘れた。」


日本史は昼寝の時間。

そう決めていた私は範囲どころか授業さえまともに聞いた覚えがない。



「なんやと!お前ふざけんのも大概にせぇよ!授業聞けや!」

「な?!き、岸本だって知らないくせに怒らないでよ!横暴だよ!」

「日本史は安土桃山時代だって赤木さんが・・・・。」


越野がまた助け舟を出してくれた。

そうか、安土桃山か。範囲がわかって少し安心する。

岸本が「アヅチモモヤマってなんやねん。」って呟いてるのは聞こえなかったことにしよう。私も自信ないけど、織田さんの時代・・・・だよね、確か。



「俺は決めたで、なまえ。」

「何を?」



ぶつぶつ呟いていた岸本が真剣な目をして私を見た。

そしてその視線は私から越野へと移る。


越野は蛇に睨まれた蛙のようだった。



「越野。俺はもう日本史は諦める。アヅチモモヤマなんて知らんしな。」

「は、はぁ・・・・。」

「そこで、や。」



ニヤリと笑って、そして岸本は越野の襟を両手で掴んだ。




「数学と英語、・・・・いやどっちかで良いねん。教えてくれ。」


いつの間にか私と岸本と越野しかいなくなっていた教室に、岸本の声が響いた。




プライドなんて、とうの昔に捨てた

(あ、それいいね!越野、あたしにも教えて!)
(あんた達、先輩って言うプライドはないんすか)
(そんなもん知らん!明日生きるか死ぬかの問題の方が重要やねん)

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まぁ実際クラス同じでも学年ごとに問題違うんで越野には何も教えてもらえないんですけどね!←

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