SD:6月 大雨注意報

「楓ー?」

「・・・・。」



じめじめした梅雨が今年もやってきた。

嫌だよね、梅雨って。お風呂すぐカビ天国になるし。この前白い床がうっすらピンクになってた、怖い。全力で洗剤をぶちまけたのを覚えている。



「で、早くやっちゃいなよ。あたしでもできたんだから。」

「で、ってなんだ。」

「うっかり出ちゃった独り言。ほら、とりあえず解く解く!腕を動かす!」

「・・・・湿気でノートが湿って書く気になれん。」

「・・・・はあぁぁぁ?」


ボソ、と呟く楓にワンテンポ置いてから思いっきり声を出してしまった。

今何をしているのかと言うと、そりゃもう聞かなくてもわかるように補習ですよ、補習。私このクラスに入ってもう3ヶ月目に突入するけど、一般クラスに居た頃より補習の回数が多くなった気がする。

楓とは補習仲間だから名前で呼び合う仲だ。



「頑張ろうよ!私も頑張ったんだから!湿ってて書きづらくてやる気になれないのは凄くわかるけど!」

「バスケしてぇ・・・。」

「無視かね!」


持っていたシャーペンの頭を楓に向ければ軽く払いのけられた。



「楓、頑張れ。ただの100マス計算じゃない。」

「・・掛け算くらい出来るのに。」



ちょっと口を尖らして不機嫌そうに椅子の背によっかかって姿勢を崩す楓は可愛い。

ファンの女の子が見たらきっと携帯のカメラモードが発動だろう。・・・・ってそんな場合じゃない。



「先生が気を使ってくれたんだよ、たぶん。楓を馬鹿にしたとかじゃなくて。」

「まぁお前の小学生の復習ドリルよりは良いけどな。」

「ちょっと、励ましてやってるのにそういうこと言う?」


同レベルでしょう?とちょっと顔を近づければ、プイッと顔を背けられる。

・・・・このやろう。



「せっかく待ってあげてるのに。帰っちゃうよ?」


そう言って机の横にかけてあるカバンを掴んで椅子から立ち上がった。

いくら数学が苦手な私といえども、算数の総復習ドリルなら当たってるか微妙だけど本気を出したためすぐに終わらすことができた。

・・・・若干分数と小数点危うかったのは気にしない。

帰れるのに待っててあげた私の優しさを無碍にした罪は重いのよ。



「・・・悪かった。」


ふとそんなことを考えていると楓の口から小さく謝罪の声が聞こえてきた。見てみると私から顔を逸らして、視線だけこっちを向いている。

思わず口元が緩んでしまった。



「んふ、待っててあげる。」


可愛いなぁ、なんてニコニコしながら椅子に再び腰をかけると、楓はちょっと悔しそうなな顔をして再びシャーペンを握った。


楓と過ごす時間は、うっとおしいはずの雨の音さえも心地よく聞こえた。




いつもと違う雨音

(あ、)
(何?)
(俺この後部活だ。)
(・・・・。)

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