まだ午後の4時過ぎだというのに、強豪海南大附属高校の体育館には俺しか居なかった。

中間テストのこの部活停止期間。俺は凄く無駄な時間だと思う。

部活をやりたい奴は部活をやって、良い成績取りたい奴は勉強して、部活も勉強も両立したい奴は両方この期間でもやっていいと思う。

つまりは部活停止っていう形をとるんじゃなくて、自由参加型にすればいいんじゃないって話。

まぁ俺は監督に頼み込んで、この通り1日シュート500本はやらせてもらっているけど。



「(でも何かが違うんだよね。)」


500本シュートし終わって、ボールを片しながらふとそう思った。

何かが足りなくて気持ち悪い。練習量が足りないとかそういう気持ち悪さじゃなくて、何かが足りないんだ。その原因がわからないから余計に気持ち悪い。



柄にもなくイライラしそうになっていた時、鞄に入っている携帯のバイブレーションが体育館に小さく響いた。

バスケットボールの入ったカゴを倉庫に戻して、自分の鞄がある場所まで歩いて戻る。

折りたたみ式の携帯をパカッと開くと、そこにはメールが1件受信されたという表示。

今の高校生みたいに早く携帯を操作するのはちょっと苦手だけど、とりあえず遅くは無い速さで携帯を操作して受信したメールを開く。

なまえからのメールだった。


そこには「お疲れ様」とまず書かれていて、続きには「テストも部活もやりすぎ注意だよ。無理しないで」と記してあった。



「(‥‥なまえじゃないんだから。)」


思わずクスリと笑ってしまった。

普段勉強と言う物が苦手ななまえは毎回テスト前日は一夜漬け。

多くても2時間しか寝てない、ひどい時は全く寝ないなまえに「無理しないで」なんて言われても説得力がまるでなし。

でもそんななまえだからこそ、構ってやりたくなる衝動に駆られるのは事実であって。


気づいた時には指が勝手に携帯を操作し、なまえに電話をかけていた。



「あれ、宗ちゃんだ。どうしたの?」

何秒か呼び出し音がなったあとにすぐ聞こえるあたたかくて優しいなまえの声。



「なまえ、今何してるの?」

「今はね、仮面ライダーの再放送を少々。」

「嘘でしょ何してんの勉強しなよ、はっ倒すよ?」

「はい、すいません。今ビデオ消します。」


いつもと変わらない口調で脅すと少し焦った声が返ってくる。

電話の向こうで慌ててテレビを消しているなまえの姿が想像できた。



「そういうことするから毎回徹夜なんだよ。しかも何、仮面ライダーって。」

「弟が仮面ライダーを録画してて、ちょっと興味本意で見たらすっかりハマッたっていう・・・・。」

「残念な思考回路だね。」

「う、うるさいな!そんなことより宗ちゃんだよ、どうしたの?」


いつもはテスト期間中に電話なんかかけてこないのに、と不思議そうに聞かれた。

テスト期間中はなまえにテスト勉強させてあげたいから一緒に帰らず先に帰らせているのであまり話す機会が無い。

機会があるとすれば休み時間か家での2・3通のメールのみ。


でもさっきの気持ち悪さの原因が、さっきのメールでハッキリした。



「ねぇ、なまえ。」

「なーに?」

「……もし、今、……すぐ会いたいって言ったら」


そこで俺は口を閉じた。

何言ってんだ俺。俺らしくない。

いつもの俺らしくない発言に電話の向こうのなまえは黙ったまま。きっとビックリしてるんだと思う。

ごめん、何でもない。そう言おうと口を開こうとしたら、先になまえが口を開いた。



「宗ちゃん・・。」

「ん?」

「どうしたの、バスケットゴールに頭打った?」

「犯すよ。」

「ごめんなさい調子乗りました!」


あんまりにも失礼な返事をするなまえに最大級の脅し発言をしてやった。

大変失礼なことになまえは全力で謝ってくる。今更恥ずかしがることもないのに、なんて思って何か言ってやろうとしたけど、なまえは続けた。



「ん、でも・・・。」


慌ててた声が落ち着きを取り戻してまたあの優しい声が聞こえてくる。



「宗ちゃんの邪魔になるから、と思ってテスト期間中は毎回大人しく帰ってたんだけど・・・・。宗ちゃんに会いたい。どんなに遅くなっても、テスト期間中でも、宗ちゃんと帰らないとしっくり来ないよ。」


照れたように最後の方を濁しながら言ってくるなまえがどうしようもなく愛しく思う。


俺が思っていた気持ち悪さは、いつもそばに居たなまえが居なかったから。

そんな簡単な事にも気づくのが遅くなってしまったけれど、




「今からなまえの家行くから覚悟してて。」

「・・・・は?!今から?!ていうか何、覚悟ってなに?!ちょ、宗ちゃ・・・?!」


待って!落ち着いて!と今日1番の慌てぶりを見せるなまえの声を無視して電話を切り、鞄を掴んで体育館をあとにした。



君のすべてが愛おしい

(お邪魔します。)
(はっやいよ、最高記録だよ・・!)

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