「ほれ、はよやれ。」

「・・・ガスバーナー嫌い。」


好きな人と嫌いな人がきっぱりと別れる化学の授業。今日は座学ではなく、理科室で実験の日だった。2人一組で行う実験は、偶然その時同じ班内にいたなまえと南で組むことになった。

そして薬品を温めるためにガスバーナーを使うこの実験。南がガスバーナーを付けるようになまえに指示すれば、「嫌」とプイッと顔を背けたなまえに南は少しだけ額に青筋を浮かべた。

口元をぴくぴくさせながら笑顔を保とうとする南。そして机を挟んでなまえの正面に座って肘を突いた。



「ワガママ言うなや。化学の授業でガスバーナー使わずに卒業できると思うなよ。」

「やってむっちゃ危ないやんか!一歩間違えたらドッカーンやで?!」

「そうならんように俺が手伝っとるんやろ。ほれ、腹くくらんかい。」

「うぅ・・・・鬼や。」



机の上にある一台のガスバーナー。なまえは半泣き状態でそれに手を伸ばした。


だが手を伸ばしただけで一向に作業を始めようとしないなまえに南がため息をつく。

正直ここで南自身が変わってやってもいいとは思ったが、それではなまえのためにならないと南はわざと変わらない。



「なんでそんなに嫌やねん。」

「だって、小さい時にテレビで大阪内の学校でガスバーナーがドッカーンっちゅうニュース見た。」

「・・・・・。」

「怖かった。」


それが原因か。


まぁ確かに子どもの頃に植えつけられてしまった恐怖は大人になっても治らないもの。それは少しだけわかる気がした。



「・・・・しょうもな。」

「な、なんやと!」


だがこのままガスバーナーに恐怖心を持たれていても困る。

怖い怖いと思っているやつほど、その恐怖心に捕らわれてミスをするものなのだ。

なので別に「しょうもない」と思っているわけではないが、ここでいつも通り南はぶっきらぼうにため息をついた。

目の前で眉間にしわを寄せてどうにかこの場を乗り切ろうとするなまえを見ながら考えると、南の頭に1つの話が浮かび上がる。



「・・・・あんな、あのニュースには裏話があるんや。」

「・・・裏話?」


はて?となまえは南を見た。

そのなまえが見ていたニュースは全く知らないが、「あのニュースそういえば俺も見てたわ」とほらを吹く。南はそのまま続けた。



「あのガスバーナードッカーン事件な。あれ実はガスバーナーがドッカーンしたわけやないねん。」


真剣な顔をして南はなまえに視線を合わせる。

そして低い声で「実は・・・・、」となまえの耳に口を近づけた。




「あれはな、二宮金次郎が学校に火ぃつけたんやって。」

「「「ぶっ!」」」



複数のクラスメイトが噴いた音がしたので南は振り返って思い切り睨みつける。話を聞いていたクラスメイトたちは肩を揺らしながら一生懸命笑いを堪えていた。

わかっている。そんな見え見えのウソ俺だってつきたくない、恥ずかしいと南は心の中で思う。こっちも必死やねん、と1人吐き捨ててポカン、としているなまえの方に視線を戻した。



「・・・・嘘やん。」

「マジ。」


それでもなまえの良いところ。信じやすいというところに付け込んで、その後は二宮さんが動いて火をつけたなんてニュースで流したら子どもが二宮さん怖がるからガスバーナーがドッカーンってなったとか、二宮さん苛めなければ学校に火はつけないとか、あること無い事吹き込んでやる。


純粋、というのか。それとも阿呆というのか。なまえはウンウン言いながら真剣に南の話を聞いていた。



「その学校の奴らのとこには二宮さんの像がちゃんとあるんやけど、うちの学校にはないやろ?」

「うん。」

「やから大丈夫。ドッカーンってならん。」

「ホント?」

「ホンマや。」


それに俺が見てるしな、と安心するように言ってやればなまえは満面の笑みを浮かべた。



「よし!じゃああたし頑張る!」

「おー。じゃあ元栓開けぇ。」



南は満足げに水道の傍にある元栓を指差して指示する。

うん、と返事をしてからなまえは元栓に手をかけた。



「・・・あ、あれ?」

「なんや、どないしてん。」


非常に焦った顔をして冷や汗を流すなまえを見て南は肘を突いていた手をあげた。



「も、元栓開かん・・・・。」

「・・・・・・。」




化学の授業が進まない
(悪い事は言わん。小学校からやり直して来い。)
(ええええ!やって開かん・・・!)
(押して捻るんじゃボケ!)

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5本指に入るくらいくだらない話を書いてしまった(゚Д゚)

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