「今日は化学やらなくていいから寝ろ。すぐ寝ろ、明日学校遅刻すんなよ!」

「了解です。」



朝早くから先生に会えた。ドライブをして遠出をして色々な所を見せてくれた。可愛いカフェにも連れて行ってくれて、もうその時は3時を過ぎていて。

甘くておいしいケーキを食べて、香り高い紅茶を飲みながら話をしていたらもうさよならの時刻は迫っていた。

学校の授業なんてこれでもかというくらいゆっくり時間が進むというのに、藤真先生と過す時間は本当に早く感じる。何より藤真先生とさよならすることが少し、さびしい。

学校へ行けばまたいつも通り藤真先生に会えるというのに。少しずつ私の中で藤真先生という存在が大きくなっていっているのと同時に、そばにいたいという少しわがままな感情も膨れ上がってきたのだ。



「太陽落ちるの早いよ・・。」

「なにが太陽落ちるの早いだよ。今日は早く寝ろって言ってんだよ、会話のキャッチボール!」


言葉と言葉のキャッチボールをしたいです!と藤真先生が言うと、そのまま続けて「いきなり独り言呟いて頭おかしくなったか?」と藤真先生は運転をしながら横目で私を怪訝そうに見る。

なんて失礼なんだろう。確かに私が心の中で言ってた独り言を口に出したのは自分でもやっちまったなとは思うけど。それぐらい今日というか、今が終わってしまうのが寂しく思えたんだ。



「本当は夕飯も一緒にーって思ってたんだけど、良く考えたら俺先生だし、学生を夜遅くに帰すわけにもいかないだろ。」


私が1人勝手に寂しくなっていると、藤真先生はハンドルを切りながら「俺偉い、凄く偉い」と私の隣で自画自賛。

あぁだからまだ5時半なのに家に向かってるのか、と時計を確認した。確かにこの季節は日が落ちるの早いけどね。でも高校生なのに6時にお家なんて、って思ったけれど、この辺の先生らしい優しさに文句は言わない事にした。


文句は無い、けどこのままこの会話を終了すると緊張した私の脳内から新しい話題が出てこない気がしたのでどうにか話をつなげようと口を開く。



「早く帰すって、花火とかは夜遅くにやったじゃないですか。」

「バカ、花火は別問題だろ。昼間に花火やれんのかお前。」

「・・・・まぁ、そうですね。」


そりゃそうだと自分の間抜けな質問に笑ってしまった。藤真先生も苦笑している。


外の方を見れば夕日が沈むにつれてどんどんオレンジ色が深まっていって眩しかった。


昨日藤真先生は言っていた。

私が受験生だから外で会える機会はもうほとんどないと。私がそれを1番よくわかっているつもりだ。藤真先生に教えてもらっているおかげで、化学の成績はだいぶ良くなった。けれどようやくみんなの普通になっただけで良いとは言えないのが事実だということも。


うん、そうだ。藤真先生は私のためを思って言ってくれてる。

それに藤真先生と会えなくなるわけじゃない。放課後の補習でいつでも会えるのだから。

今だって、先生は学生の私を心配して早めに家へ帰してくれているのだから。

寂しいなんて、思っちゃいけない。


そんなことを1人悶々と考えていると、待ち合わせ場所だった公園の前に車が止まった。

藤真先生が車から降りると、すぐさま私の方に来て私がドアへ手をかける前にドアを開けてくれる。

普段は暴君なのに、こういう時は紳士でずるいと思う。



「じゃあな、家に入るまでがお出かけなのであと100メートルくらい気を付けて帰れよ。」

「小学生の遠足みたい。」

「脳みそレベル変わらねぇからちょうどいいだろ。」


気をつけろよー、と笑顔で私に手をひらひらと振ってくる。


こういう会話をして楽しませてくれても、やっぱり先生は先生らしい。

一線を引いて絶対に触れてこようとはしない。

私は勝手に。勝手に、か、えりにキス、とか。ちょっと夢を見ていた。

先生の立場は分かっているけど、やっぱり寂しいと感じてしまう。



「今日はとっても楽しかったです。」


さよなら、とヘラリと笑って背を向ける。

しょうがない、私はまだ子供なのだから。そう自分に言い聞かせながら踏み出した。



「なぁ、」


家へ向かおうと家の方向へ何歩か歩いたとき、後ろから藤真先生の声がして振り向いた。

すると先生はなんだか少し恥ずかしそうに人差し指で頬をかきながら口を開く。



「俺、一応先生だし、立場気にしてるから。ちゃんとその辺だけはけじめをつけてるつもりだ。今はお前にこれ以上のことはできない。」


けど、と藤真先生は自信たっぷりの、それこそ艶があるのに少年のような笑みを浮かべて口を開いた。



「卒業したら、覚悟しろよ。」 


そしたらもう対等だ


そう藤真先生は夕日を背に笑った。




夕日で頬が染まるのです
(ずっる・・・!)
(は?!何がずるいだてめーふざけんな!)

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久々更新でした!お待たせしました!とっても難産な回だった_(:3 」∠)_

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