「お疲れ様ー。」

「・・・どうしたんだ?」



寒いし、学校疲れたし、ココア飲みたいし、早くかーえろ、というノリで昇降口まで来た。けれど下駄箱に自分の上履きを入れた途端、ふと紳一に言いたかったことを言っていないという事実を思い出した。

うーんどうしようかな、言おうかな、言わないようにしようかな、でもなーうーん、どうしようかなあー、あ、でも考えてたら会いたくなってきた。もうちょっとで部活終るよね、待ってよーっと。という長考の末、紳一を待とうという考えにたどり着く。

外が暗くなってきている上に、寒い中ただただ外で立ったまま待つのは辛いので、私は飲みたかったあたたかいココアを自販機で買って体育館前で紳一を待っていると部活を終えた紳一が体育館の引き戸を引いて現れた。




「今日は部活終わるの遅くなるから先に帰れって言ったろ?」


こんなに寒い中外で待ってるなんて阿呆じゃないのか、と紳一はため息をついて私の手を握る。



「冷たいな。」

「ココア持ってたからまだ比較的あったかいよ。」

「でも十分冷たい。」


また呆れた様な顔をする紳一の手は大きくてあったかかった。あったかいというより、熱い。練習後だから少し汗ばんでいるけれど、紳一の手だから全然不快に思わない。私の冷えた手も紳一のあたたかい手に温められてだんだんあったかくなってくる。



「せめて今度から待ってる時は体育館の中にいてくれ。」

「えー・・・・でもそうすると・・・・・。」

「あ、姉ちゃん!」

「・・・・ほら来た。」


声がした方を振り返ると、そこには2つ下の弟、ノブがいた。

私が体育館に行くと、弟のノブがうるさくなるんだよね。愛されてるな、私。なんて思うけれど、やっぱりうるさい。



「俺のこと待っ・・・・!」

「ってないよ、紳一待ってた。」


にっこり微笑んでそう言うとノブはしょぼん、と悲しそうな顔をする。

あー、どっかに神君いないかな、この子を引き取ってもらわないと。



「あぁ、そうだった。何で待ってたんだ?」


神君を探すためにキョロキョロとしていた私に、紳一は思い出したように肩にかけていた鞄を背負いなおしながら首をかしげた。




「あ、そうだった。紳一、クリスマス終わるまでに部活ない日ってある?」

「・・・・午後練習がない日とかならあるかもしれないが。」


一日中休みの日はわからないな、と牧は顎に手をやった。



「何でだ?」

「ネズミーランドで今クリスマスバージョンになってるから行きたいなって。」

「あれ、姉ちゃん人混み嫌いだろ?」

「うん、でも行きたくなった。」


不思議そうに首をかしげて話に入ってくるノブにそう言うと、不思議そうにノブは腕を組んだ。

CM見てたら、突然行きたい衝動に駆られたんだよね。クリスマスだから行きたいんだよ。他の季節にネズミーランドなんか行かない。絶対死ぬ。

そう言うと「なまえらしいな」と紳一は困ったように笑った。



「良いぞ、休みが入ったら行こう。」


空く保障はできないけど、と紳一は付け加える。

例え空かなかったとしても、行こうと言ってくれただけですごく嬉しくなった。



「わーい、さすが紳一!優しいところが大好き!」

「姉ちゃん俺は?!」

「じゃあ紳一、私帰るねー。」

「姉ちゃん?!」


思いっきりノブを無視して紳一に手を振り、背を向ける。

後ろでノブがギャーギャー煩い。本当に神君はどこにいるんだろう。




「何言ってんだ、ちゃんと家まで送る。」



ノブの喚き声の中から、紳一の声が聞こえたかと思うと、後ろからふわりと手を取られた。

繋がれた手を見て、そこから視線を紳一の顔に移すと小さく笑っていた。



「うん、やっぱり紳一好き。」

「どーも。」


繋がれた手をきゅっと握ると握り返してくれる。


さっき喚いていたノブは神君を見つけて、「神さーん!」と叫びながら走っていってしまった。私が神くんを探さなくても、ノブは神くんレーダーを巡らせて勝手に傍に行ってしまうから神くんって存在に本当に助けられる。

明日、ちゃんと神君にお礼を言わなきゃと心の中で誓った。



「いつも俺といる時は清田の話しかしないくせにな。」

二人きりになって暗闇の中を歩き始めると、紳一は笑いながら言ってきた。



「可愛い弟ほど、いじめ倒したくなるものなのです。」


ちなみに私も清田だから私とノブの話をする時はノブって言ってね、と言うと紳一は優しく微笑んだ。

ノブには帰ったら優しく接してあげよう。




たくさんの静かで優しい愛を、君へ

(今思ったんだが、さっきの内容言うだけなら電話でもメールでもいいよな?)
(・・・・・あ。)


***
ノブ弟に欲しい

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