秋が深まってきた金曜日の放課後。
いつものように藤真先生が部活の合間を縫って化学準備室で補習をしてくれていた。今日は問題を先に私に解かせてから間違いを後で教えてくれるらしい。
最初は来週の授業の準備とか、部活の練習に戻ったりとかで色々動き回っていた先生だったけど、部活の練習時間も終わってようやく落ち着いて雑誌片手に私の前に座った。
実はもう部活も終わる時間だし帰らなきゃいけない時間なんだけれど、どうしても今やっているページだけは終わらせたくて(今やめたらやる気が消滅するので)藤真先生にお願いしたら「あと10分な」と許可してくれた。
しかも私が頑張っていると思ってくれたらしく頭を撫でてくれた。なんかごめんなさい先生。
早く終わらせようと問題を解いていたら、数分後に藤真先生の唸り声が聞こえた。
「んー。」
「・・・・どうしたんですか?」
私が問題を解いている間、ひたすら旅の雑誌を読んで「うーん」と唸っていた藤真先生。眉間に少しだけしわが寄って綺麗な顔が台無しだった。
あんまりにも悩んでいる様子だったので気になりすぎて思わず声をかけてしまった。
そんな私を見て先生は「んー?」と言ったあと、何か考え続けてそして雑誌をバタンと閉じる。
「出かけっぞ。」
「は?」
たった一言そう言った。藤真先生の言ってる事があまり理解できなくて、持っていたペンを置いて問いかけてみる。
「えーっと・・。出かけるってどこに?」
「どっか。」
「・・・・。」
「ほら、あれだよ。お前一応受験生だから出かけるとしたらチャンス今しかないだろ。」
明日なら俺も部活ないしちょうどいいんだよ、と藤真先生は転がる椅子に乗ったままシャーと私の前まで来る。
ちなみにこの椅子は高野先生が使っていたものだったんだけど、藤真先生はこの椅子が大好きで、高野先生から奪ったらしい。可愛そうに、高野先生。なんて思い出していたけれど私の脳内は正常に働いた。
藤真先生と出かける、イコールそれはデ・・デート、なんじゃない・・かと。
でもここは学校だからもし聞かれたら困ると思って「デートですか」なんて聞けなくて。悶々としていたら藤真先生が「今のお前の脳内に浮かんでる単語であってるぞ。」と笑んでくれたので脳内がバーンてなりそうになった。
「で、どうする、いく?」
ニヤニヤとちょっと意地悪な笑みを浮かべて私の顔を覗き込む。藤真先生の整った綺麗な顔がすぐ傍にあって顔から火が出そうだ。
ドキドキと心臓の音もうるさい。藤真先生に聞こえてもおかしくないぐらいドキドキしてしまっていた。
「行きたい・・です。」
小さく顔を真っ赤にしながら伝えれば、「おし!」と藤真先生は満足げに笑ってくれた。
お出かけの準備をしましょう
(この前花火した地元の公園で待ち合わせな) (はい!)
**** ちょっとした前置きなんで短めです、すいません><
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