藤真先生は、やっぱり今年も文化祭でベストオブティーチャーに選出されました。



「ありえない。」

「殴るぞお前。」


えー?と言えば本当に雑誌で叩かれた。痛い。

今日は翔陽高校文化祭でした。うちのクラスはダンスで衣装作りが追いつかなくて狂いそうになったけど、ギリギリ間に合って無事ダンスをすることが出来た。

踊ってる時に藤真先生がうちのクラスを見に来てて私と目が合った瞬間にニヤニヤしてたのは忘れない。恥ずかしいのとコノヤロウという感情でいっぱいになった。



「俺以外に誰がベストオブティーチャーになるんだよ?」


言ってみろ!と椅子に座って足を伸ばして机に足を乗っけるこの人が逆にどうしてベストオブティーチャーなんだと問いかけたい。

うーん、と藤真先生を置いて考えてみた。国語の先生・・ないな。音楽の先生・・もないな。

色々考えてみたけど「この人!」っていう先生がみつからなくてとりあえず近い人を口に出してみた。



「・・・・花形先生とか。」

「花形は却下。」

「何でですか。」

「何となく悔しい。」

「じゃあ高野先生。」

「高野に負けるくらいなら俺は豆腐の角に頭を打って死ぬ。」


高野に負けたら悔しいとかのレベルじゃすまないんだよ!と藤真先生は机の上においてあった袋の中をゴソゴソと漁った。

高野先生、何てかわいそうな人なんだろうと哀れんでいると藤真先生は私の方にに何かを投げる。キャッチしてそれを見ると購買で売られている文化祭限定の菓子パンだった。



「うわあああ、これ、1番人気のアップルデニッシュじゃないですか!」


どうしたんですかこれ!と問いかければ、藤真先生は机の上においていた足を下ろして肩肘をついて得意げにこちらを見る。



「購買のおばちゃんにコッソリ頼んでおいた。」

「職権乱用ですね!」

「違う違う、この前俺がレジ閉め手伝ってやったお礼でくれたんだよ。」


文化祭限定の1番人気パンどーぞーって、と藤真先生は購買のおばちゃんの真似をする。すごく似てないけど面白くて笑ってしまった。



「それやる。」

「え、いいんですか!」

「いーよ。」


俺は去年も食べたしな、と藤真先生は立ち上がった。

化学準備室に置かれている冷蔵庫へ進むとガチャリと音を立てて冷蔵庫ではなく冷凍庫の扉が開かれる。「お、まだ大丈夫そうだな」なんて藤真先生の独り言が聞こえたかと思うと藤真先生は両手にコップを1つずつ持ってこっちへ戻ってきた。



「なんですかそれ。」

「氷イチゴとメロン。」

「なんと・・!」


氷イチゴ、というのはカキ氷じゃなくて氷自体がイチゴのシロップで出来ているやつ。

これを文化祭でミルクに入れたりして売られているんだけど、今年は飲みにいけなかったんだ。

すごくうれしいです!と言えば、そうかそうかと藤真先生も嬉しそうに白い歯を見せて笑ってくれる。カッコいいなぁ、なんて、思ってしまう私の気持ちをどうにか抑えた。



「昨日先に氷だけ高野から貰っておいたんだ。」

「高野先生?」

「あいつ今年氷イチゴの担当だったんだよ。」


だから藤真先生は高野先生からイチゴとメロンを少しずつ貰って冷凍庫で保存しといたらしい。

1度机の上に氷を置くと、藤真先生は冷蔵庫に戻って牛乳を取り出す。近くにあったコップも2つ持って戻ってくると、コップに氷を少しずつ入れて牛乳を注いだ。

ストローをさしてかき混ぜると氷が少しずつ解けて白い牛乳の色がピンクや緑になっていく。



「ほら、これもやる。」

「いいんですか?」

「ダンス頑張ったご褒美だな。」


そうそう言われると私が踊っていた時に見ていた藤真先生のニヤニヤ顔を思い出す。私の上手いとはいえないダンスを見てきっと笑うのを我慢していたに違いない。

あのニヤニヤは忘れませんからね、と氷イチゴのミルクを受け取りながら頬を膨らますと藤真先生は「悪い悪い」と眉を下げてクスクスと綺麗に笑った。



「でも可愛かったよ、ダンス。」

「・・・・!」


嘘じゃないぜ?とニヤニヤする藤真先生の余裕が悔しいのもあったけど、それ以上に「可愛い」と言ってもらえたことに喜んでいる自分がいた。



大人の余裕は、ずるい
(そう言えばなんでわざわざ氷イチゴとかパンとかもらったんですか?)
(なまえと一緒にいられる時間無かったから放課後2人でゆっくりしようと思って)
(・・・・・・!)

****
ピーターでも氷いちごの話出した気がするけど・・まぁいっか。あれおいしくて好きです。

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