「ああああどうしよう!夏休みの宿題終わらない!」
「お、っまえ・・!終わらせとけよって言っただろーが!」
「数学忘れてたんですよ・・!」
どうもこんにちは。残暑厳しい中いかがお過ごしでしょうか、なまえです。
先日藤真先生に自分の気持ちを先生と生徒という関係の中、ギリギリ使える表現で想いを告げて晴れて両思い(?)になれました。嬉しいです。
でも今すごくピンチです。明日から2学期が始まるのに夏休みの宿題の一部の存在を忘れていました。しかも数学。なんで忘れてたんだろう。前に花形先生にあった時に「あ、数学やってないなぁ」って思ったのにどうして忘れちゃったんだろう。
悔やんでも悔やみきれないっていう気持ちと、もうどうでもいいやという投げやりな気持ちが交差して頭の中がパニックです。
「何ぶつぶつ言ってんだよ、口はいいから手を動かせ!」
「花形先生の宿題鬼畜過ぎて・・!」
もう・・諦めたい、と崩れたら藤真先生に安西先生という人の物真似をされた。誰だろう?
それにしても花形先生のプリントもう問題の書いてある意味から理解できない。うんうん唸っていたら藤真先生が口を開いた。
「がんばれなまえ。終わったらアイスが待ってるぞ。」
「あ、本当ですか・・!アイスアイス・・って・・・・え?」
一瞬、暑さゆえの空耳かと思った。あんまりさらりと普通に言われたからそのまま聞き流すところだった。
ノートと睨めっこしていた視線をバッと上げて目の前に座っている藤真先生を見れば、ちょっとだけ照れた顔で私から視線をそらされる。
「今、私の事名前で呼んでくれました・・?」
「・・・・まぁ、2人の補習の時ぐらいはな。」
呼んだっていいだろ、別に。と藤真先生は照れているのを隠すように右手できれいな髪をかき上げた。
ドキンドキンと自分の心臓の音が聞こえる。
それこそこの音が藤真先生に聞こえちゃってるんじゃないかって心配になるくらい。きっと顔も真っ赤だし、耳も赤いだろうし、シャーペンを持つ手が少しだけ震えた。
藤真先生も私の方を見ないで、横を向きながらひじを突いて手に平に顔を埋めながら口を覆っている。
「なんか反応しろよ。」
「や・・恥ずかしくて・・。う、嬉しすぎて言葉が、出ないっていうか・・・・。心臓が、いたい・・というか・・・・。」
もうなんか言葉を出すのも精一杯ですどうしましょう、と恥ずかしさに私も両手で顔を覆った。
ちょっと前まで自分の気持ちを欺けたのに、この前「思いを告げられた」ということでそれまでの留め金が外れたのか、藤真先生の1つ1つの言葉や仕草にドキドキしてしまう。
それを認識すると「あぁ藤真先生の事好きなんだ」と再自覚してしまって恥ずかしい。それ以上に胸が苦しい。これからも藤真先生と個人授業をしてもらうのに毎回こんな感じだったら頭に何も入らない。
切り替えなきゃいけないんだ、線を引かなきゃいけないんだと頭の中ではわかってるけどそれを行動に移したりするのはすごく難しいと思うんだ。
「なまえ、どうした?」
色々考えすぎていたら藤真先生が気にしてくれたのか私の顔を覗き込む。近づいてきたきれいな顔に思わず体を後ろにやって距離をとってしまった。
その行動に不快感を覚えたのか藤真先生は「てめぇ・・」と先生らしからぬ言葉を吐いた。しまった、やっちまった!と思って「び、びっくりしたんですよ!そんな言葉先生が使っちゃだめだと思います!」なんて自己防衛する。
それでも藤真先生は今にも私に教科書を投げてきそうな勢いだった。
「せっかくこっちは心配してやってんのにいい度胸じゃねぇか・・!」
「いやいやいやいや!先生がいきなり顔を近づけてくるのがいけないと思います!」
私今大変なんですよ!頭も心臓も私のいうこと聞いてくれなくてドキドキバクバクして大変なんですよ!それなのにいきなり先生の顔が目の前にあったらそりゃあ逃げますよね!と一生懸命反論するけど、藤真先生は聞く耳を持ってくれてないらしく私の手首をつかんでこれ以上距離をあけられないようにした。
「1番最初の補習の時も言ったが、俺は1度狙った獲物は逃がしてやらねぇぞ。」
「なんか付属してる!獲物なんて最初言われなかったのに・・!」
楽しそうにニヤニヤしている藤真先生はとってもイキイキしていた。狼さんに狙われたうさぎちゃん、なんて可愛い表現をしたらあれだけど、きっとそんな感じだ。私の脳内があと少しでキャパオーバーする、どうしよう。
この人は大人だから。きっと藤真先生は少なからず場数を踏んでいるはずだから、だから緊張しないのかもしれない。ううん、それ以上にこんなガキ相手にはドキドキなんかするかバーカ、っていうレベルかもしれない。ありえる、すごいありえる。
ちらりと先生に掴まれている手首を見た後に先生を見れば、先生は首をかしげて私を見ていた。
またおかしいこと考えてるんだろうな、こいつ。なんて考えて首をかしげてるんだろうなぁなんて思う。
その瞬間にギュッと握られていた手首に少しだけ力をくわえられてビックリして先生を見直せば、手首を握っていないもう片方の手で頭を掻いて恥ずかしそうに視線だけで私を見ていた。
「ま、あれだ。1つ1つ、慣れていけよ。俺だってドキドキするときはドキドキする。」
新しいことが増えてそれについていけないのは当たり前なんだから。と藤真先生は私の頭を撫でる。
藤真先生の言葉は、とっても安心する。最初は脅かしたりしてくるけど、そのあとは毎回必ず私を安心させてくれる言葉を付けてくれるから。
先生も私も、おんなじ気持ちなんだと思えただけで私の心は一瞬またドキドキしたけど、安心したせいかすぐ少しだけ治まってくれる。
うん、大丈夫。慣れればこれからもちゃんと先生と平常心で勉強できる。そう思えた矢先だった。
それにあれだ、と藤真先生は人差し指を挙げて提案するように笑ったのは。
「なまえがドキドキしてるのも見てて楽しいし、それ以上に可愛いとも思う。」
慣れることは、できるんだろうか・・・・
やっぱりあなたは翔陽のプリンスでした (この人は、恥ずかしいことも思ったら普通に言葉にしてしまう、元翔陽王子なのを忘れていた。)
**** 藤真は根っからの王子気質の持ち主なんだと思うよ
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