俺の朝の占いは、最下位。



「今隣のクラスのサッカー部の奴に告白されてたよね?」

「・・・・あ、見てた?」

「バッチリ。」




学校へ出かけようとした時、自転車のチェーンが切れる。

朝練で疲れているところを担任に見つかって、「いや、悪いね!」なんて教室までクラス全員分のノートを運ばされる。

昨日家で予習の為に使った辞書をそのまま家に忘れる。


そして、昼休みにはなまえがどこぞの馬の骨に告白されている現場に遭遇。


俺は占いなんて全く気にしないタチだけど、今日だけは占いを信じても良さそうだ。




「どうして断るのにちゃんと呼び出しのところに行くわけ?断るんだったら無視して行かなければ良いじゃん。」


なまえが告白を断り、その断りの言葉を聞いて馬の骨が去った後、俺はヅカヅカ出て行ってなまえの腕をとり、体育館裏まで引きずっていったのが今の状況。

今なまえは俺から目線だけをそらして、この世の終わりみたいな顔をしている。



「だ、だって断るにしてもちゃんとお断りしないと失礼だ・・し。」

「別に良いじゃん。なまえは俺の彼女なんだよ?それを知らない奴はこの学年に居ないはずだし、そいつだってわかって言ってるんだから。」



すごく不愉快だよ、となまえの顔を見ずに吐き出した。

今日は悪い事が続いたせいで、どうにも怒りが収まらなくて言葉がキツくなってしまう。


でもずっと一緒にいるなまえならわかってくれると思って遠慮なく言ってしまった。


それが、いけなかった。




「・・・・何で宗ちゃんにそこまで言われないといけないの。」

「っ、」



ビックリしてなまえの方を見た。


普段は言い返さない、いや言い返させないんだけど。今日のなまえは違った。

いつもと同じようになまえを見る目と声に圧力をかけているのになまえは目にうっすらと涙を溜めて下唇を噛んで小さく震えていた。


そんななまえを見るのは初めてで、思わず息を呑んだ。



「・・・・ふぅん。俺に向かってそういう態度とるんだ?」



言い方は強かったかもしれない。

でも俺も負けたくなくていつも通りの態度を取ってみせる。



「そういう態度とかっ、・・そーゆう問題じゃなくてっ・・・・!」


詰まって絞り出した声に思わずハッとした。

我慢してた涙をポロポロ流しながらなまえは声を絞るように出す。

人差し指や中指を使って、一生懸命涙を止めようとしていた。



「宗ちゃんが・・いるからっ、ごめんな、さいって言、おうと・・・っしただけなのに・・・!」


なんで、そういうことを言うのとなまえは消えるように叫んだ。


必死に訴えるなまえの声に胸が張り裂けそうになった。

ナイフかなんかでグサリと裂かれたような気分だ。



ちがう、泣かせたかったわけじゃない。

例え「ごめんなさい」って言うだけの告白の返答をする短い時間でも俺以外の奴と2人きりになってほしくなかっただけで。


俺だけを見ててほしくて。

この俺の中にあるドロドロな独占欲という本能を止めることができなかったんだ。



「・・・ごめん。」

「っ・・・・!」


出来るだけ優しく声をかけて、近寄ってなまえの頬に手を添える。

それでも俺を拒絶するかのようにビクッとなまえは震えた。


それがどうしようもなく頭にきて、でもそれ以上に悲しくて虚しくて。

これ以上怖がられたり嫌われたくなくて優しく頬を撫で続ける。



「ごめん、なまえ。」



俺が悪かった、と声をかけながら下を向いて泣くなまえの顔をゆっくり上げる。

泣かせてしまっているのに、そのなまえの泣き顔すら愛おしく見えてしまった俺は重症だと思う。



「朝から嫌な事が続いて、それでいつもより余計にイライラしちゃってて八つ当たりしたのかもしれない。」


だから怖がらないで、拒絶しないで、もう泣かないで。


それらを言葉になさなくても頬に添えている指先から気持ちが伝わるように、親指で涙を拭ってあげた。


しゃがんで目線を合わせれば、なまえは何度も躊躇いながら俺に視線をやっと合わせてくれる。



「ごめん、なまえ。」

「・・・・私も、いきなり勝手に泣いてごめんね。」


一言一言丁寧に反省した気持ちを込めてもう一度謝れば、なまえは目尻に涙をためながらも、いつもの優しい笑顔を見せてくれた。


泣き顔なんかよりもずっとずっと好きななまえの笑顔。

それを見れたことがたまらなく嬉しくて、強く、でも壊れないようにぎゅっとなまえを抱きしめた。




君に、(愛に)堕ちる

(俺が悪かったけど罰は受けてもらうよ。)
(うん。・・・・・え?!)

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