「うーあ゙ー。」

「うるせー、早く見ろ。」

「だってー・・・・、」



右手には今さっき返されたばかりの中間の英語のテスト。一生懸命勉強したんだけどこれは、この教科だけは自信を持てない。

自信を持つどころか不安しかない。だって何かいてあるかわからなかったんだもん。なので結果が怖くて返されてからすでに10分経っているのに未だに点数を見ていない。



「無理だって、絶対赤点だって。あの日の私のカンが素晴らしいほど冴え渡っていない限り無理だって。何せ問題読まずに記号適当に埋めたからね!」

「どあほう。」

「なっ・・!か、楓なんか解答用紙回収する時ほぼ真っ白だったじゃん!」

「書いたつもりだった。」


夢の中で。

そう付け加えられたら何も言えなかった。でもすぐに笑いが込み上げてきたので、お腹を抱えて笑っていたら楓に早く自分のテストを見ろとデコピンされた。



痛むおでこを数回撫で、ようやく意を決した私はそーっとそーっと、ちらっと見えるくらいにゆっくり答案を開く。



「ん?んー・・・・?お、おおお?!おおおおお!!!」



思わず叫んだ。

だって、そこには予想していたよりも良い点数が書かれていたから。



「赤じゃない!きたあぁぁぁっ!」

YES,YES,YES!と何度も拳を上下させた。


赤覚悟だったのに。追試バチコイだったのに。

ありがとう、先生。諦めずに適当にデタラメでも文書いておいて良かった。



「あれ、楓?」


嬉しくて握り締めていたテストを机におくと、その様子を不機嫌そうに眉間にしわを寄せて見ている楓がいた。

何よ、と首を傾げればより不機嫌そうな顔をする。



「・・・別に。」


そう言ってテストを床に放り投げて自分の両腕を枕代わりに寝始めた。なんて失礼な奴なんだろう!と思いながら優しい私はひらひらと舞い落ちた楓の答案用紙を拾って見た。


ああ、なるほど・・・・



「・・・ふて寝か。」



点数を見れば楓の行動も理解できる。

楓は見事に赤点をゲットしていた。



「大丈夫だよ、楓。赤点の1つや2つ、どうってこと・・・」

「3つ目。」

「・・あれ、私の記憶が正しければ返ってきたテストまだ3つ・・・・。」


突っ伏したままの楓にそう返す。


返ってきたテスト全部赤だったのか・・。と私は苦笑した。それはいくら楓でもさすがに落ち込むな。



「大丈夫だよ、楓。楓は部活頑張ってるもん。もし追試になっても一緒にやってあげるから。・・・・聞いてます?」



何も反応がない楓を再び見てみた。

スースーと規則正しくたてる寝息。あぁもう、こっちは楓を励まそうとしたのに。

そうだよね、テストごときで楓が落ち込むわけがないよね。



「・・・楓ー、先生睨んでるよ。」


とりあえず先生の雷が落ちないうちに楓を起こすことにしよう。




独尊系彼氏
(楓、赤点3つ以上あると全国行けないってホント・・?)
(・・・・おう。)
(追試!追試やってもらおうね!職員室に土下座しに行こうね!)

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