いつぶりかわからない、バスケ部の休み。
しかも休日に!日曜日に!なんという素敵なプレゼントなんだろう、わくわくしちゃう!
なんて思わず乙女になっちゃうくらい、楓から「日曜休み」と聞いた日は涙が出るほど嬉しかった。
どこに行こうかな、新しくできたカフェがとっても雰囲気が良くて高校生のお財布にも優しいって評判だからそこに行ってみようかな。あ、でもきっと楓疲れてるだろうから今日はお出かけは我慢して楓の家で一緒にお菓子食べながらゲームしたり、忙しいシーズンが終わったらここに行こうとか雑誌見ながら決めようかな。
そんなことを一生懸命考えながら流川家のチャイムを推したのが2分前。
楓のお母さんとはもう中学時代から仲良しなのでこんにちはと普通に挨拶をする。そして楓のお母さんはすごく申し訳なさそうに楓の部屋へ通してくれたのだ。
「なんで寝てるかな・・・。」
たたき起こしてやって。
そう言われて部屋に入ればそこには爆睡している楓の姿があった。
もうお昼過ぎだよ、楓。
昨日の電話で自分から「家来い」って言ったよね?あれ、私の聞き間違いだったのかな?休みというあまりの嬉しさから起こった幻聴だったのかな?
それは・・無いって信じてる。だって昨日しっかりバッチリ聞き返したもんね。マジ?って聞いたら、「おう」って言ってたもんね。
そんなことを自問自答しながら布団を剥ぎ取った。が、楓は目を瞑ったまま布団をかけなおす。
「お昼ですよー。」
「・・・うるせー・・。」
「うるせ・・?!起きろ楓!」
私の中でプチン、と何かが切れた。
もう優しくなんて起こしてやる気なんかさらさら無かった。そんなのもう綺麗に消えうせた。
もう一度ガバッと布団を引き剥がしてやってから心の中で「ざまあ!」と叫んでやる。
するとさすがの楓もうっすらと目を開いてこっちを見た。
「・・・さみぃ。」
「楓が悪い。」
小さくため息をして楓にそう言った。
せっかくの休みだから、ゆっくりさせてあげようと思ってたのに。
「ダイジョーブ」って言って自分から誘ってきて、死ぬほど嬉しかった私をおいて寝てる楓がいけない。
もう昨日凄い嬉しかったんだから。お母さんに変な目で見られちゃうくらい昨日はニヤニヤが止まんなかったんだから。嬉しすぎて遠足の前の日みたいに寝られなかったんだから。
「・・・なまえ、」
「何よ・・・って、わっ!」
心の中で凄くイライラした感情を叫んでいたら楓の声が聞こえてきたので、そっぽを向いていた顔を楓に向けると手首を掴まれて楓の温かい胸へダイブ。
一瞬で顔が熱を持った。
「なに?!」
「寝る・・・。」
「寝るって?!え!?ちょっと!」
私が騒ぐのを無視して引き剥がした布団を再びかけながら楓は言った。
そして私が暴れるのを止めるように抱きしめて背中をポンポンとたたいた。
優しく「おいで。」なんて、不器用な彼は言ってくれないけど、さっきまでの怒りは嘘みたいに消えてしまった。自分の単純さに苦笑してしまう。
楓のそばにいて、楓のぬくもりを独り占めできるだけで、満足してしまったのだ。
でもそんな単純な私だからこそ、楓が一緒にいやすくて、一緒にいたいって思ってくれたら、なんて思う。
「あったかい・・・。」
この温かい優しさだけで今日は十分かな、なんて思った私は、久々の2人の休日をゆっくり過ごすことにした。
そして目覚めれば (・・夕方・・・・だと?) (はよ・・・)
**** こんなのんびりしたカップルでお送りします。
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