「あ、これ美味しいですね。」
「だろ?」
もふもふと暑い化学準備室にある机でアイスを頬張る私と藤真先生。
数日間、藤真先生はバスケの全国大会で留守にしていたけれど、つい先日帰ってきた。
全国大会の結果は4位に終わったらしい。優勝したがってたから落ち込んでるかな、と思っていたら全然落ち込んでいなかった。むしろ目がキラキラしていた。
全国は化け物ぞろいでとても楽しかったらしい。俺が勝負したいくらいだったと笑っていた。
そして私はそんな藤真先生と新発売のアイスを食べている。と言っても味はイチゴとチョコなんだけど。これがまた美味しいのだ。
「あー・・暑い部屋でアイス。・・・・アイスが今までで1番愛おしく感じる。」
「俺もだぜ。あー、扇風機でいいからほしい。窓全開なのになんでこんなに暑いんだよ。ていうかお前ちゃんと課題終わらせてたのはいいけど半分くらい間違ってたぞ。」
「え、半分も合ってたんですか・・!」
「目をキラキラさせるな・・。」
まぁたしかに最初の頃のお前と比べたら大分よくなったけどな、と藤真先生は頭を撫でてくれた。
藤真先生は少しでも理解が深まるとそのたびに褒めてくれる。どんなにちょっとした事であっても絶対褒めてくれた。
今までそんな先生は少なかったから本当に嬉しくて、もっと褒められたいな、なんて一生懸命嫌いな化学と向き合ってしまう。
単純なことだけど、先生と生徒にとってそういうのが一番大事なんだなって思った。
「お前何ニヤニヤしてんだよ・・・・おっと!」
藤真先生はもう半分溶けてきたアイスを慌てて口に放り込んだ。私のもそろそろ危ないので急いで食べる。
藤真先生は食べ終わったカップを潰してから3メートルくらい離れたゴミ箱へシュートする。凄くきれいに入った。さすが先生、バスケ部元エースは嘘じゃないんだなぁと自分の中で思った。
「そういえば先生は夏休み満喫しなくていいんですか?」
「は?」
「だってせっかくの夏休みですよ?私の面倒見ていただけるのは嬉しいですけど、何か用事とか無いんですか?」
食べ終わったアイスのカップをゴミ箱に捨てながら問いかけると藤真先生は「んー、」と頭の後ろで手を組んだ。
「まぁ・・別にやる事は無いけどな。花火やりてぇな。」
「あぁ、夏の風物詩ですもんね。高野先生と花形先生でも誘ってやったらどうですか。」
「ふざけんな!体がでかい男ばっかでやってる所想像しろよ!きもいだろ!」
「・・・・否めない。」
暗い公園ででかい図体をした男が3人。確かにきもい。ていうかなんか怖い。想像しただけで一瞬鳥肌が立った。
鳥肌を立った腕をなだめるように高速で擦っていると、藤真先生は「あ!」と大きく言って勢い良く立ち上がる。
「俺いい事思いついた!」
にやにや楽しそうにこっちを見ながら藤真先生は言った。久々のなんか「悪戯考えちゃった♪」みたいな顔だからちょっと色んな意味で恐ろしい。
「な、何ですか?」
「暑いから1日くらい課外授業ってことで夜花火しようぜ!」
「・・・・はぁ?」
何言ってんですか、という目で見れば藤真先生はなんだよ、と返す。
「夜は涼しいし、花火の色を使って炎色反応も覚えられるし。一石二鳥じゃねぇか。」
「・・・・確かに。」
「俺天才だな。」
自画自賛するので放っておいたら頭を軽く殴られた。
いつやる?今週中にでもやるか?今週雨降らないしな。あ、なら明日やるか?思い立ったが吉日って言うしな!夕飯くらい奢ってやるよ。お前夜コンビニ出られんだから夜出ても平気だろ?つーか花火やるって言って止める親はそんなにいないしな。遅くならなきゃ大丈夫だろ。花火は俺が準備するからな。集合場所は地元の公園で!
「ってことでもう今日帰っていいぞ。」
「・・・・。」
満足したらしい 一気にマシンガントークをした先生は、先生とは思えなくて、まるで同級生と話してるみたいでした。
**** 短くてすいません。次の布石みたいな話なので許してください(笑)
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