「うー・・ん・・・・。」


溜めに溜めた宿題と睨めっこ中な私。

あぁ、ダメだ。絶対に終わらない。提出期限いつだよ・・。・・あ、明日か・・・・。誰か見せてくれるかな。



「・・お前2時間も何やってんだ。」

「あ、おとーさーん・・。」


絶望に浸っていると、後ろから声がしたので振り返って見てみる。

そこには流川楓。つまり私のお父さんが立っていた。



「2時間もシャーペン片手に固まってなんか面白い事あんのか。」

「違うよ、好きで固まってたわけじゃないよ、わかんないの。」


そう答える私に、ふーんと興味なさそうに右手に持っていたバスケットボールをクルクルと回した。

バスケット選手のお父さんは年がら年中暇な時は常にバスケットボールを持っていて、人さし指でクルクルと回すのが癖だ。



「お父さん。ここ、ここわからない。」

「・・俺に聞くな。」

「えー、ちょっと、楓君!」

「楓君って言うな・・・・。問題文が英語って時点で俺はアウトなんだよ。」


回していたボールを止めて両手で持ちながらお父さんはむすっと私が持っている問題集を睨んだ。



そう、私たちが今住んでいるのはアメリカだ。

私が小さい頃に、日本一のバスケット選手になったお父さんはアメリカに渡った。

もちろんお母さんも私もお父さんについてきた。

だから小さい時からアメリカに住む事になった私は、ある程度生活に困らない程度の英語は喋る事が出来るし、書ける。

・・いや、多分日本の高校生や大学生よりも英語は出来るかな。

でも数学とかが苦手・・なんだよね。今睨めっこしてるのも数学だし。



「お父さん、ここだよ。」

「だからわかんねぇって。」

「じゃあ何ならできるの?」

「・・・体育。」

「・・・・・。」


少しだけ恥ずかしそうにお父さんは私から目をそらしながら呟いた。



「あー・・。確か前にお母さんが、楓は頭が良いとは言えないわよ、って言ってたもんな・・・・。」

「・・ほっとけ。」


そう言って胡座をかいていた足を解いて立ち上がる。



「行くぞ、なまえ。」

「・・どこへ。」

「バスケしにコート。」

「・・・私宿題・・・・。」

「わかんねぇもんやったってわかんねぇだろ。」

「・・・・・。」



すごい、絶対親の言う事じゃない。いいのか、やらなくて。


そんな呆然としている私を置いてお父さんは玄関にどんどん進んでいく。

バスケ好きなお父さんから生まれた私は、もちろんお父さん並にバスケが好きなわけで。



「・・よっし!お父さん!1on1ね!」


我慢できずにシャーペンと問題集を投げ捨てた。



「・・・・1回な。」



そうボールを肩に置きながら口元を上げて少し笑うお父さんは娘の私から見ても凄くカッコ良くて。


嬉しくなった私は、おんぶして貰うかのように大好きなお父さんの背中にダイブし、首に腕を絡ませた。




似たもの親子

(とうとう宿題やらなかった・・)

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